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情報の価値分析に基づく大型哺乳類の最適管理戦略の構築(令和 3年度)
Optimal management of mammal populations based on value of information analysis

研究課題コード
2022CD006
開始/終了年度
2020~2022年
キーワード(日本語)
情報の価値分析,シミュレーテッド・アニーリング,農業被害
キーワード(英語)
value of information analysis,simulated annealing,agricultural damage

研究概要

近年日本各地でイノシシやシカなどの大型哺乳類が増加し、その個体数管理が重要課題となっている。しかし、広域を対象とした事業においては、個体数などについて、常に限られた知見に基づいて最善と考えられる対策を選ばざるを得ない。大型哺乳類の個体数管理事業の多くにおいて、捕獲は個体数を減少させるための手段としてだけではなく、個体数を推定するためのデータでもあるため、個体数推定値の精度を高める役割も担っている。本研究は、情報の価値分析により、個体数や個体群パラメータの正確な情報を得ることの価値を定量化することにより、捕獲の直接的な効果(生息数低減)と間接的な効果(精度の高い個体数推定値等を得ること)の両方を考慮した捕獲努力の最適配分を導出するための一般理論を構築する。こうした成果は、日本などの人口減少社会において、限られた捕獲努力を最大限に活用することになり、野生動物の効果的な管理戦略の構築につながるであろう。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

情報の価値分析により、個体数を最小化するために必要な捕獲努力の空間配分と自動撮影カメラの設置場所や数を導出する。
(1)捕獲努力の最適な空間配分の導出
将来の捕獲による個体数の確率分布の更新がないと仮定して、個体数を最小化するための捕獲努力の最適な空間配分をシミュレーテッド・アニーリング法により導出する。この場合の最小化された個体数の期待値をN#とする。
(2)情報の価値を求めるための数理統計モデルの構築
捕獲や自動撮影カメラによる個体数の不確実性の低減効果を考慮に入れた場合、捕獲努力量と自動撮影カメラの設置場所に対する将来の個体数の期待値N*を求めるための数理統計モデルを構築する。
(3)情報の価値分析による哺乳類管理戦略の導出
自動撮影カメラの設置など情報を得るためにはコストを伴う。情報の価値(個体数の低減効果:N#-N*)と情報を得るためのコストを比較し、個体数を1頭低減するためにかけられるコストを設定することにより、最適な情報を得るための捕獲罠と自動撮影カメラの設置場所や数などを求める。情報の価値分析により、正確な情報を得ることの価値を定量化することで、不確実性をどの程度小さくすることが個体数管理において重要なのかを示すための一般理論を構築する。構築した理論により、多種他地域への適用や、農業被害と個体数・環境要因(農地面積など)の関係など、個体数以外に関する情報の価値を求めることができるようになる。

今年度の研究概要

千葉県の2019年度と2020年度の狩猟統計データを取得し、個体数と個体群パラメータの推定値を得る。推定したパラメータを用いて、個体数の最小化だけではなく、農業被害の最小化を目的とした管理を行うために、農業被害と個体数・環境要因(農地面積など)の関係を推定する。
 また、将来の土地利用の変化の予測を、イノシシの個体群動態モデルに反映させる。土地利用シナリオごとに情報の価値分析を行うために、捕獲努力と自動撮影カメラの設置場所に対する将来の個体数の期待値を求めるための数理・統計モデルを高度化する。

課題代表者

横溝 裕行

  • 環境リスク・健康領域
    リスク管理戦略研究室
  • 主幹研究員
  • 博士 (理学)
  • 生物学
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