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近世における気候変動がコメ収量に及ぼした影響の定量的解明(令和 3年度)
Quantitative Analysis of the Effect of Climate Change on Rice Yield in the Early Modern Period

研究課題コード
1921CD031
開始/終了年度
2019~2021年
キーワード(日本語)
気候変動,影響
キーワード(英語)
Climate Change,Impact

研究概要

我が国の最重要作物であるコメの収量の年々変動は、気候変動が主な原因であると知られ ている。近世の東北地方では、3年に一回という非常に高い頻度で凶作に見舞われ、収穫皆 無年も度々あったことがわかっている。特に天保の大飢饉(1833-1839年)では、複数年の 凶作によって、全国で百万人前後の餓死者を出したと伝えられている。しかし近世のコメ 収量は、わずかに篤農家による稲刈帳にいくつか残されているが、気候データとの直接的 な比較についてはほとんど行われていない。また、コメ収量の将来予測をするために、水 稲生育モデルが開発されている(MATCRO-Rice: Masutomi et al., 2016, GMDなど)が、モ デルのパラメータは、現在の栽培品種(コシヒカリなど)に対しての調整が行われており 、過去・将来の品種変遷に対応できていないという課題がある。 そこで本研究では、稲 刈帳によるコメ実測収量と、水稲生育モデル(MATCRO-Rice)シミュレーションを組み合わ せ、我が国の近世250年間における気候変動がコメ収量に及ぼした影響を定量的に解明する ことを目的とする。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:

全体計画

本研究では、近世250年間(1600-1850年)の稲刈帳記録と、古環境復元データと、水稲生育 モデルおよびパラメータ最適化を組み合わせ、以下の3つを行うことを目的とする。
1稲刈帳によるコメ実測収量への気候変動の影響の解明: 全国十数地点において非常に 長い期間にわたって実測された(山梨県北巨摩地区(1770-1940年)や、佐賀県厳木村 (1780-1934年)など)坪当たり収量(籾重・刈束数)を、文献収集・デジタル化・単位 変換(10a当たりkg玄米重へ)する。それらの長期トレンドを動的線形モデル(DLM)に よって除去し、年輪より復元した夏季気温データ(Asia2k, 2°x2°グリッド, 800-1989 年, Cook et al., 2013, Clim. Dyn.)およびPDO index(D

今年度の研究概要

水稲生育モデルのパラメータ最適化による近世品種の気候変動への感度の解明: MATCRO-Riceの光合成・植物季節・分配などを制御する20程度のパラメータを対象に、 1の実測とモデルの収量の差を、最小化するための統計的繰り返し調整を行う。次に気 候モデルMIROC-ESMによる古気候復元実験(850-2000年・1時間平均)などを利用し、1の対象地点の気候入力データを作成する。そしてマルコフ連鎖モンテカルロ法によっ てパラメータを最適化する。それらパラメータの時間・地理的変化から、近世のイネ生 理特性と気候変動への感度を明らかにする(H30-H31)。

外部との連携

北海道大学

課題代表者

増冨 祐司

  • 気候変動適応センター
    アジア太平洋気候変動適応研究室
  • 室長(研究)
  • 博士(地球環境学)
  • 工学,農学,物理学
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