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2023年6月14日

受賞のお知らせ~
田和 康太 特別研究員らがELR2022つくばで優秀口頭発表賞を受賞

概要

受賞者氏名: 田和 康太、平野 佑奈、加藤 大輝、西廣 淳(気候変動適応センター)
賞の名称:  優秀口頭発表賞
授賞機関:  ELR2022つくば
受賞年月日: 2022年9月23日
受賞対象:  耕作放棄された谷津の湿地化は水生動物群集にどのような効果をもたらすか?, ELR2022つくば, 同予稿集, 35, 2022

ひとこと

谷津は丘陵地や台地が長期間にわたり侵食されて形成された樹枝状の浅い谷の湿地です。谷津では古来より天水と豊富な湧水を利用して水田耕作が行われてきました。こうした水田では、大河川平野部の後背湿地に形成されてきた水田水域とは異なる特異的な生物群集が形成されます。谷津は主に千葉県での地方名ですが、同様の景観は全国に分布します。中でも、関東地方は特に谷津の多い地域となっています。しかしながら、現在、谷津では圃場整備事業や耕作放棄、埋め立てが進行し、谷津の有す特異的な生物多様性が急速に失われています。その一方で、気候変動による洪水被害が激甚化、高頻度化する現在、谷津には治水、水質浄化、生物多様性の保全の両立が期待され、里山グリーンインフラの名のもと、耕作放棄された谷津の利活用が進められています。本研究では、千葉県富里市立の耕作放棄された谷津(通称、八ツ堀のしみず谷津)において清水建設株式会社や地元団体、東邦大学と協同し、湿地再生を進めてきました。具体的には植生遷移が進み、高径草本や樹木で鬱蒼とした状態の谷津で植生管理を実施し、湧水地点から土水路の整備等により最下流の耕作放棄水田1枚分を湛水湿地化しました。その結果、谷津全体の水生動物の種類数は湿地再生前の11種から22種へと大幅に増加しました。また、再生湿地における水生動物群集は周辺の慣行水田や耕作放棄された谷津内に残されていた土水路、湧水湿地とは大きく異なりました。以上より、耕作放棄された谷津で湿地再生することで、新たな水生動物群集が形成され、生物多様性保全に貢献することが期待されました。その一方で、侵略的外来種の抑制には課題も残されており、今後も更なる研究の継続を予定しております。