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2023年11月13日

受賞のお知らせ~
田和 康太 特別研究員、西廣 淳 副センター長が応用生態工学会第26回京都大会優秀口頭発表賞を受賞

概要

受賞者氏名: 田和 康太、西廣 淳(気候変動適応センター)
賞の名称:  応用生態工学会第26回京都大会 優秀口頭発表賞
授賞機関:  応用生態工学会
受賞年月日: 2023年9月22日
受賞対象:  麻機遊水地における湿地創出は水生生物の保全に寄与するか?—あさはた緑地における公園利用の一環としての湿地づくりから—, 応用生態工学会第26回京都大会, 同予稿集, 2023

ひとこと

近年の気候変動に伴う洪水被害の激甚化・高頻度化と生物多様性保全・回復の必要性を背景として、生態系を活用した防災(Eco-DRR)が注目されています。その例として、元来氾濫原だった場所の地形的特徴を活かして遊水地を設定し、治水と自然環境保全に役立てる選択があります。遊水地は治水施設ではあるものの、河川水位が一定以上を示すと冠水するため、氾濫原湿地を利用する生物の保全に寄与する可能性が指摘されています。しかしながら、多くの場合、遊水地に入る洪水は流速が遅いため、氾濫原の撹乱依存種の生育・生息に必要な強度・頻度の撹乱が保持されません。そこで遊水地に人為撹乱を加えることができれば、生物多様性保全と治水の両立につながることが期待されます。静岡県静岡市の麻機遊水地では、遊水地の一部が公園地区に設定され(あさはた緑地)、そこでは湿地植生を適度に撹乱し生物多様性保全と利活用を両立させる「湿地づくり」の活動が2022年から実施されています。本研究では、この活動の生物相への効果を、植生と水生動物群集の面から検証しました。植物では、81種が確認され、そのうちミズアオイ、タコノアシなどの6種が環境省レッドリスト掲載種でした。これらはいずれも氾濫原において強い撹乱が生じた後に生育する種でした。水生動物に関して、対象湿地の群集は公園内にもともと創出されていたため池やハス田と明瞭に異なっていました。また、対象湿地のトンボ目成虫の種数は公園内の休耕田やハス田に比べて顕著に多い結果となりました。以上より、再生湿地の創出によってあさはた緑地の生物相に対して一定の正の効果がみとめられたことから、「湿地づくり」の活動が、氾濫原の生物多様性保全に寄与する可能性が示唆されました。