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コラム「酸性雨2」

影響

 酸性雨は,発生地周辺のみならず,拡散され広範囲の地域に影響を及ぼします。ヨーロッパでは,英国,ドイツ,フランスなどで発生したSO2を含む大気汚染物質が,国境を越えて他の国々へ輸送され,沈着しています。スウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国では河川・湖沼の酸性化による魚類の死滅など被害が深刻化しました。一方,米国でも東部の工業地帯から排出されたSO2などのガスが,周辺地域および国境を越えてカナダへ輸送され,湖沼の酸性化をまねき大きな社会問題となりました。

対策

 1979年にはヨーロッパ,米国,カナダなど33カ国が「長距離越境大気汚染条約」を締結しました。その後ヨーロッパでは1985年に「硫黄排出または越境移流の最低30%削減に関する議定書」が採択されました。こうしてピーク時と比べSO2はかなり削減されました。日本でも大気中のSO2濃度は,1960年代後半で50ppb(全国平均)ありましたが,1968年に大気汚染防止法が施行され対策が進められた結果,1985年頃には5ppb程度まで下がり,その後20年近くこの低い濃度で推移しています。

今後

 SOx対策は,石炭から石油,そして天然ガスへと硫黄分の少ない燃料の使用へ移行すること,また脱硫技術の採用により解決のめどが立っています。ところがNOxに関しては技術的に難しく,いまだに解決のめどは立っていないのが現状です。先進国はもちろん,今後発展途上国でもNOxを排出する自動車の増加が予測されます。酸性雨問題は将来も続くと考えられます。