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コラム2 「メカニズム、4つの仮説」

 インポセックスを引き起こす誘導メカニズムについては、これまでに以下の4つの仮説が立てられていました。

(1)アロマターゼ阻害説(1996年)

 巻貝もヒトなど脊椎動物と同様のステロイドホルモンを持っている、という前提に立った説です。ヒトの場合はコレステロールがさまざまな酵素の働きによって種々のステロイドホルモンに変わっていきます。そのうち、代表的な男性ホルモンであるテストステロンは、アロマターゼという酵素の働きで代表的女性ホルモンであるエストラジオールに変わります。ところが、TBTによってそのアロマターゼが阻害されることにより、エストラジオールの生成が減り、逆にテストステロンが増大して雄性化するというものです。

(2)男性ホルモン排出阻害説(1996年)

 ヒトの場合、体の中から余剰の男性ホルモン(テストステロン)を排出するときには、テストステロンが硫酸抱合体やグルクロン酸抱合体となります。巻貝も同様と考え、そのときにTBTの作用でテストステロンの硫酸抱合体としての排出が阻害され、体内に残留するため雄性化するというものです。

(3)脳神経節障害説(1983年)

 巻貝には脳に相当する器官として神経節(神経の束)があります。この説は、中枢の神経節から分泌される、ある種の神経ホルモン(ペニス形成因子)がペニスの形成に関与し、雌の場合は同時にペニスを作らせない別の神経ホルモン(ペニス形成抑制因子)もあって、正常な状態では両者の拮抗作用により、雌にペニスが生じないというものです。しかし、TBTによってペニス形成抑制因子(の分泌)が阻害されるため、雌にペニスが生じる、というものです。

(4)APGW アミド説(2000年)

 (3)の仮説に立脚し、ペニス形成に関与する神経ホルモンはAPGWアミドであるとしたものです。なおAPGWアミドとは、アラニン、プロリン、グリシンおよびトリプトファンの4つのアミノ酸が結合し、C末端にCONH2の構造を持つペプチドです。