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主任研究企画官 高木 宏明

 4月に独立行政法人に移行してから,はや半年以上がたちました。昨年の今ごろは,先行きもわからず,多くの不安を抱えつつ,予算折衝や内部の組織の再編などに取り組んでいましたが,それも遠い過去のように思えます。4月に新しい体制のもとで再出発したものの,独立行政法人設立と環境ホルモン総合研究棟および地球温暖化研究棟の竣工の記念式典,公開シンポジウムの開催などの大きな行事に加えて,内閣府の総合科学技術会議での分野別推進戦略の議論や14年度予算要求への対応などで忙殺されて,あっという間に秋を迎えたというところです。独立行政法人になってからの仕組みの変更などに伴う問題点はいろいろと出てきていますが,独立行政法人となったことへのとまどいは徐々に薄れてきており,独立行政法人になったことの意味を再吟味して,研究所の運営を前向きに見直してみることができる時期にきているようです。いろいろな場での議論を踏まえて,その際に考慮すべきいくつかの点について述べてみたいと思います。

 まず第一は,独立行政法人に与えられた自由度を研究所の運営にどれだけ生かしていけるかということです。これは研究所運営の効率化とも大きくかかわってきます。独立行政法人は現時点でも未知の海を航海していることにはかわりがありませんので,どこまで自由なのかよくわからないというのが実状です。したがって,独立行政法人同士で情報交換を行いつつ,試行錯誤により実績を作っていくしかないと思っています。ただ,自由であるということは大変難しいもので,間違えば放漫と惰性に陥ってしまう恐れもあります。自由を最大限に生かしていくためには,研究所全体の強い意思が必要です。

 第二は,当研究所が独立行政法人として生き残っていくために,研究所の特色を明確にしていく必要があります。これにはいくつかの面があると思いますが,研究所が長期・継続的に取り組んで他に追随を許さない蓄積をつくっていくのも一つの方向です。いろいろな分野があり得ますが,モニタリングデータの蓄積であるとか,環境省が当研究所での実施を前提に14年度予算要求している環境試料タイムカプセル化事業などがその例に入ると思います。また,当研究所には理学から工学,農学,医学,経済学などいろいろな分野の研究者がいます。これらの研究者が環境問題について専門分野を超えた総合的な研究を行うことができるというのが当研究所の特色の一つです。しかし,最近はこの特色がうまく生かされていないのではないかという声をよく聞きます。この特色を再認識して研究を組み立てていくことを奨励するような方策が必要となっているように思います。

 第三は,当研究所の活動をいろいろな主体の方々に知ってもらうための研究成果の普及や広報がますます重要となってくることです。研究成果を論文などで発表することは研究所として当然のことですが,一般の方々にもわかりやすく紹介する努力が今後ますます重要となってきます。「環境儀」の創刊は,その一つの試みです。また,最近,産学官連携が強調されていますが,これまで民間企業との接触が少なかった当研究所としては,まずは企業の方々に当研究所のポテンシャルを知ってもらうことから始めなくてはならないと考えていますので,その意味でも広報は重要になってきます。

 7月の公開シンポジウムの際に「国立環境研究所友の会」が発足しました。これまでに日本全国から400人近い方々に入会いただいています。また,公開シンポジウム自体にも1200人の方々に参加いただきました。私たちは,これほどの数の方々が当研究所の活動に関心を持っていただいていることを心に刻みながら研究活動を進めていくことが必要であると思っています。

(たかぎ ひろあき,主任研究企画官)

執筆者プロフィール

1974年に環境庁に入りました。昨年7月に現職につきましたが,以来,独立行政法人化に明け暮れてきました。つくばにいると運動不足になります。週末のテニススクールで体重を調整している状態です。