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「サマー・サイエンスキャンプ」 開催報告

【研究所行事紹介】

企画部 広報・国際室

 国立環境研究所では,7月28日(火)~30日(木)および8月18日(火)~20日(木)の各3日間,サマー・サイエンスキャンプ2009を実施しました。このキャンプは,文部科学省の後援の下,(独)科学技術振興機構が高校生を対象として夏休み期間中に開催する先進的科学技術の体験型合宿です。当研究所では1999年から毎年本プログラムに参画してきました。今年は3つのコースを開催し,多数の応募者の中から選ばれた20名の高校生がプログラムに参加しました。

 『生物と環境』(開催地:つくば本所)では,Aコース「植物(大気汚染の影響を観察しよう)」,Bコース「微生物(微生物の多様性を覗いてみよう)」の2つに分かれて合宿学習を行いました。Aコースでは大気汚染が植物に与える影響を学びました。実際に光化学オキシダントをタバコの葉に暴露させて生じる障害を観察し,植物が環境から受けるストレスの防御法にはさまざまなものがあることを学びました。高校のカリキュラムで実験をほとんど行う機会がない参加者もおり,研究者の指導の下,手探りで細かく根気のいる実験作業を進めていました。Bコースでは,つくば市内の洞峰公園で採取した土壌中の微生物から抽出した特定の遺伝子を遺伝子増幅装置(PCR装置),電気泳動装置(DGGE装置)を使って増幅・分離し,多様な微生物遺伝子を確認する実習を行いました。期待どおりの実験結果が出た人もいれば,出なかった人もいましたが,このことは,実験過程の「何」が「どのように」実験結果に影響を及ぼすのかを考えるきっかけになりました。

実験室で
マイクロピペット,うまくできるかな?

 『東京湾の魚介類と環境を調べてみよう~東京湾の本当の姿を実体験!~』(開催地:神奈川県柴漁港,東京湾,つくば本所)では,東京湾の貧酸素水塊の発生水域と発生していない水域の2つのポイントで採集した魚介類の種類,種別の個体数と重量,および水質(水深別の水温や溶存酸素濃度)を比較分析し,現在の東京湾の生態系を構成する魚介類を実際に観察し,貧酸素水塊が魚介類の分布や生態に与える影響について学習しました。東京湾での採集作業は,天候にも恵まれ,漁業組合の皆さんの協力を得て,無事に船上での作業を終了することが出来ました。

図鑑に載ってる?

 サイエンスキャンプに参加した生徒は,研究室に展示されているパネルや,研究室での学習で示されるデータが,研究者の日頃の地道な作業と長期に及ぶデータの積み重ねに基づくものであることを知りました。生徒の中には,今回の実習体験を将来の進路を考える際の参考にしたいと思っている人もおり,研究者の仕事を実際に体験するという貴重な機会を提供できたと考えています。高校の授業で実験を経験する機会が減っているという状況の中,研究所としては,本プログラムへの参画をとおしてより多くの高校生に科学に対する興味を持ってもらう機会を引き続き提供していきたいと考えています。