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2019年2月7日

未規制燃焼由来粒子状物質の動態解明と毒性評価

国立環境研究所研究プロジェクト報告 SR-133-2018

SR133表紙画像
SR-133-2018 [3.21MB]

 大気中を浮遊する粒径が2.5マイクロメートル以下の微小粒子状物質(PM2.5)は、人の健康に影響を及ぼすおそれがある重要な大気汚染物質であり、低減が必要とされています。様々な発生源がPM2.5やその原因となる物質を排出していますが、中でも農業残渣の燃焼-いわゆる「野焼き」-については、統計がほとんど整備されておらず、実態が把握されていませんでした。

 このような背景を踏まえ、本研究では、大気中のPM2.5の濃度観測と成分分析による実態ならびに野焼きの影響の解明、大気中及び麦や稲の燃焼実験で得られたPM2.5の毒性評価、野焼きの発生件数の調査結果に基づき気象条件や刈り取り時期を考慮した「野焼き発生件数推定モデル」の構築、3次元大気質シミュレーションによるPM2.5に対する野焼きの影響評価などを進めてきました。

 その結果、野焼きの発生件数が多かった日にはPM2.5中のレボグルコサン(植物中のセルロースが燃焼するときに生じる無水糖)の濃度が高く、レボグルコサンの濃度と野焼き件数の傾向に相関が見られました。観測結果から、PM2.5に含まれる有機炭素と黒色炭素に対する植物燃焼の寄与はそれぞれ19%、16%程度と推定されました。麦や稲の燃焼で生成するPM2.5は、毒性が大気中のPM2.5と同程度もしくはそれ以上であることが示唆されました。野焼きの発生には降雨前の増加などの明確な気象条件の影響が見られ、気象条件と刈り取り時期を考慮したモデルにより、野焼き発生件数が精度よく再現されました。また、モデルで推定された野焼き発生件数とPM2.5の排出量を用いて大気質シミュレーションを実行し、PM2.5に対する野焼きの寄与について観測結果と定性的に整合する結果が得られました。

 本研究成果は、PM2.5の発生源としての野焼きの影響の大きさと対策の重要性を示すとともに、大気環境保全のための総合的施策の検討に役立てられることが期待されます。


(国立環境研究所 地域環境研究センター 高見 昭憲)

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