- 予算区分
- BE 環境-循環型社会
- 研究課題コード
- 1012BE003
- 開始/終了年度
- 2010~2012年
- キーワード(日本語)
- バイオマス,地域活性化,戦略立案
- キーワード(英語)
- biomass, regional revitalization, strategy planning
研究概要
本研究では、これまで明確にされていない、バイオマス利用による地域活性化の効果を定量的に分析することにした。その概略は、バイオマス利用と地域の社会経済的要素との因果関係を明確化し、それを定量的に表現する分析モデルを構築する。さらに、事例研究として具体的地域を想定したバイオマス利用の技術システムを設計し、その地域活性化効果の定量的分析を試みる。このような事例研究を通じて、他の地域でも適用できる汎用的な戦略立案手法の確立を目指す。
研究の性格
- 主たるもの:行政支援調査・研究
- 従たるもの:応用科学研究
全体計画
まず、既存のバイオマス利用事例の情報を整理した上で、地域活性の要素(例:生産額、定住人口など)と関連する要素(例:地場産業の規模、環境配慮の付加価値など)を列挙する。次に、それら要素間の因果関係(例:地域でのバイオマス利用→地場産業拡大→生産額増加など)を明確化する。
さらに、この因果関係を定量的に表現する分析モデルを構築する。現時点で想定しているモデルは、バイオマス利用の技術システム(以下、単に「技術システム」と呼ぶ。詳細は後述)のデータに基づいて、地域規模のバイオマスフロー、環境負荷排出量、および事業収支が算出され、それに連動して社会経済的な要素の数値が変化し、最終的に地域活性の要素の数値が変化するものである。考慮する要素間の係数(例:産業規模に対する雇用者数など)や関数の根拠となるデータは統計や文献から収集する。既存データが存在しない係数(例:地場産業規模に対する知名度など)などに関しては、アンケート調査を実施してデータを収集する。
同時に、前述の因果関係とバイオマス利用の成功事例の情報を踏まえ、具体的な地域とバイオマスを想定して、定性的な地域活性化の暫定戦略を検討する。その例として、茨城県における食品加工残渣の飼料化・利用による養豚業での費用削減などが考えられる。さらに、この暫定戦略に沿った技術システムを設計する。
以上を踏まえた事例研究として、前述の分析モデルに技術システムのデータを入力し、定性的な暫定戦略の効果を定量的に検証する。その結果、技術システムの改善点が抽出されれば再度設計・分析し、最適化を図る。このような定量的な分析結果に、定性的な要素の考慮も加えて、想定地域を活性化するバイオマス利用の技術戦略を立案する。さらに、事例研究を通じて分析モデル自体の課題も修正し、他の地域でも適用できる汎用的な戦略立案手法を確立する。
今年度の研究概要
今年度は、昨年度に収集したバイオマス利用による地域活性化の事例情報を整理し、比較検討することによって成功確率を高めるための要因などを抽出する。また、昨年度に検討した因果関係を表現する分析モデルを確定する。さらに、確定した分析モデルの構造を踏まえて、不足するパラメータを明確にした上で、昨年度に実施したアンケート予備調査の結果も踏まえて、市民に対するアンケート本調査を設計・実施する。同時に、昨年度の郵送・訪問調査結果を踏まえて、自治体および企業に対する追加調査も実施する。また、農業系バイオマス、下水汚泥、および木質バイオマス各々を主原料とするバイオマス利用について、具体的な地域を想定し、地域活性化戦略を立案するとともに、同戦略に沿った技術システムを設計する。同時に、地域活性化戦略の立案手法自体の妥当性についても議論を続ける。
なお、本研究をとりまとめている最中の2011年3月11日に東日本大震災が発生、膨大な量の震災廃棄物と津波堆積物が残された。震災廃棄物等には廃木材や汚泥などのバイオマスも多く含まれている。被災地の復興には、これら震災廃棄物等の有効利用が急務となっている。震災廃棄物の処理が終了した後の施設の用途や作業員の雇用も課題である。何より、被災地では地域のコミュニティや行政機能までもが喪失の危機に直面している。このような危機に対して、本研究の「バイオマス利用と地域活性化戦略」という題目は、様々な形で貢献する可能性を有している。そこで、今年度は、当初の計画どおりに作業を進めるとともに、社会貢献として、被災地における震災バイオマス有効利用と地域復興の方策を検討・提案することも考えられる。
外部との連携
農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所(柚山義人)
土木研究所・土木研究所 材料地盤研究グループ(岡本誠一郎)
岩手大学 農学部(伊藤幸男)
芝浦工業大学 工学部(栗島英明)