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資源循環分野(令和 3年度)
Material Cycles Research

研究課題コード
2125FP133
開始/終了年度
2021~2025年
キーワード(日本語)
資源循環,廃棄物
キーワード(英語)
Material cycles,Waste management

研究概要

社会経済活動に伴って利用される物質を資源性・有害性の両面からとらえ、資源から廃棄物に至るライフサイクル全体を通じた物質のフロー、ストック、循環の実態把握・影響評価、将来予測、環境負荷の低減や資源効率の向上に資する管理方策の提案等を行うための調査研究。物質の循環的利用、廃棄物の適正な処理・処分、環境の修復・再生のための技術・システムの開発と発展途上国等への適合化のための調査研究を実施する。

研究の性格

  • 主たるもの:政策研究
  • 従たるもの:基礎科学研究

全体計画

先見的・先端的な基礎研究として、資源利用の持続可能性評価と将来ビジョンに関するシステム研究を推進する。国際的な資源のフロー・ストックを推計し、資源利用の動態変化に関する量的・構造的特性の分析とともに予測モデルの開発を行う。また、資源のライフサイクルを通じた環境・経済・社会影響から見た資源リスク等に関する評価手法の開発に取り組み、多様なステークホルダーが資源の持続可能性を理解するための可視化手法を構築する。3 年目頃までに主に金属資源の全球的なフローとストックの動態解明と将来予測モデルを開発する。最終的に資源リスク等の評価手法の開発を進め、ステークホルダーとの対話を通じて、評価手法の実用性と有益性を高めていく。つぎに、廃棄物処理・資源循環過程を中心とした化学物質のフロー・ストックの動態把握手法の開発等を行うとともに、人々のモノへの態度や認識等を明らかにし、最終的に持続可能なライフスタイルの構築に資するヒトとモノとの関係を提示する。さらには、アジアにおける環境配慮型コミュニティに対するロールモデルを提示し、最終的にその概念・設計方針をガイドライン化する。技術基盤づくりの観点から、マイクロ・ナノプラスチック汚染やゼロカーボン等の近未来の課題解決に向けて、先導的かつ基盤的な分析評価技術及びリサイクル技術を開発する。すなわち、プラスチック微小粒子に関する定量分析技術、含有化学物質の影響指向検出技術、無害化等の対策技術を開発し、プラスチック微小粒子の対策に必要な技術基盤を提供する。また、脱炭素や安全確保に配慮した地域循環共生圏の中核的資源化技術として、熱化学的もしくは生物学的変換技術、相平衡等に基づく分離技術、CO2回収利用貯留技術(CCUS)などの各要素技術とそのコンバインドシステム技術を開発し、最終的に企業等と連携した実証研究を通じて社会実装を目指す。加えて、新規POPs 指定化学物質を含有する製品・廃棄物の実態把握のためのサンプリング法・前処理法・機器測定法を組み合わせた網羅分析法を開発する。

政策対応研究として、まず、循環型社会形成推進基本計画及び廃棄物処理法基本方針を支援して、人
口オーナス時代の3R・廃棄物処理のシステムと方向性を提示しつつ、サーキュラーエコノミー等の国際動向を視野に入れて資源循環システムをリデザインする研究等を行う。最終的には、一般廃棄物に関する国や自治体の計画目標と政策戦略の策定支援、超高齢時代における廃棄物処理システムの確保策を提示する。つぎに、廃棄物処理・資源化過程から排出されるマイクロプラスチック、アスベスト等及びそれに含まれる有害物質の計測手法を確立し、作業従事者等の健康影響に関する包括的な評価を行う。加えて、POPs 条約等への貢献のため、製品ライフサイクルに伴うPOPs 等樹脂添加剤の挙動、非意図的生成POPs の発生源等を調査し、動態解明と適正管理に向けた基礎知見を提供する。また、廃棄物熱処理過程等での有価金属や有害物質の挙動解明を進めるとともに、土石系循環資源の利用過程における環境安全品質評価手法の規格化、微生物による循環資源グリーンインフラ機能向上に向けた研究を行う。さらに、我が国の廃棄物処理処分技術のアジア等への適応を図るとともに、衛生面及び環境安全面での高度化に資する技術・システムを開発し、合理的なアジア都市の代謝システムを提示する。途上国における包摂的・住民参加型廃棄物管理の実現に向けて、分散型技術の導入と行動変容に関する実践的研究を行い、受容性・定着率の高い技術支援のあり方を示す。さらに、廃棄物等の物流制御、埋立技術の評価、液状廃棄物の適正処理・リサイクル技術、浄化槽の低炭素化の研究を行い、対策効果の検証を行うとともに、国際標準開発につなげる。上述の成果を通して関係機関との戦略的パートナーシップを強化し国際共同研究を推進するとともに、国際標準化戦略の支援等を行う。また、アジア地域等の社会実装プロジェクト形成や成果発信の手法についても知識と経験の蓄積を図ることで、研究成果の活用を通した政策・技術的貢献に資する。さらに、災害環境分野との連携の下に災害廃棄物対策を支援するオフィス活動を通じて自治体や一般社会の災害対応力向上に資する。

知的研究基盤整備として、研究から副次的に整備される資源及び廃棄物のフロー・ストック、並びに廃棄物管理に関するデータベース群を構築、改良し、国内外に向けて公表する。中長期計画期間前半に、金属フローに関するデータベースを公表する。日本の一般廃棄物データベース、アジア・太平洋地域における開発途上国の都市廃棄物データベースが国内外で広く閲覧、活用されるよう、随時改良する。最終的に、国際機関及び海外研究機関との連携を通じ、データベースを拡張、公表する。

今年度の研究概要

先見的・先端的な基礎研究として、資源利用のサプライチェーンを通じた環境・経済・社会影響評価と持続可能性ビジョンの設計に関する研究を行う。また、脱炭素や安全確保に配慮した持続可能な資源循環及び地域循環共生圏の中核要素技術に関する先導的基盤技術を、工学、理学の各種手法を統合的に用いて研究・開発する。
1)国際貿易による天然資源の国間移動に関する時系列解析と将来シナリオ分析のためのモデル開発を行うと共に、資源の国際移動を量的・構造的に特性化する方法論の開発に着手する。また、廃棄物・化学物質に係る既存の統計や行政情報の整理と廃棄物処理・資源循環過程における化学物質のフロー・ストック把握への活用可能性の検討を行う。
2)ナノプラスチックの定量分析に必要な標準物質の生成条件とその品質を明らかにするとともに、耐候性試験機等を用いたプラスチックの微細化に関する研究に着手する。また、プラスチック含有化学物質について、曝露方法等を含めて規制物質の毒性作用機序に基づく影響指向検出法の開発を行う。一方、分散型かつ脱炭素型の先進的廃棄物資源化システムとその構成要素技術を整理し、実装に向けた技術的課題を抽出して課題解決に着手する。

政策対応研究として、資源循環と廃棄物管理に関するシステム分析と調査、制度設計と政策評価、ステークホルダーの行動分析を含む社会システム研究を行う。また、循環資源や環境媒体中の有害物質等に係る試験評価法を確立し、資源循環過程における随伴挙動や環境への放出実態の解明と影響評価に関する研究を行う。さらに、固形廃棄物の収集運搬、中間処理、資源化、埋立処分及び液状廃棄物処理技術について、我が国の技術の高度化とアジア等海外へ適用、また外国産技術のアジア等へ適用に関する技術開発を行い、社会実装に貢献する。
1)循環型社会形成推進基本計画及び廃棄物処理法基本方針の策定を支援するために、これまでに国環研が開発した一般廃棄物モデル(MINOWA モデル)を用いた政策シナリオ分析などを実施する。
2)マイクロプラスチック等粒子状物質の計測に適した試料採取・前処理法、画像解析によるアスベストの迅速測定手法、及び製品中フッ素化合物POPs を特定するための分析法を開発するとともに、廃棄物処理・資源化施設における新規POPs の環境排出、分解処理等の実態を調査する。また、スラグ等の土石系循環資源を対象に、水生植物植栽基盤への適用可能性の検討、及び環境安全性評価手法の開発を進める。
3)固形廃棄物の収集運搬、中間処理、資源化及び埋立処分並びに液状廃棄物処理の個別技術の高度化またアジアへの適合化を進めるとともに、分散化などの社会の転換を見据えた日本またはアジアにおける技術システムのあり方を示し、それを実装するための住民参加型などの行政手法・政策の効果の検証に着手する。
4)資源循環領域における異分野融合的な国際共同研究のシーズ発掘とプロジェクト化を図る。海外学術機関・自治体との対話を通じて社会実装及び政策貢献に至る研究活動とのマッチングを支援する。研究成果の社会還元の出口としての国際標準規格の開発を推進する。

知的研究基盤整備として、資源循環分野における研究から副次的に整備される資源及び廃棄物のフロー・ストック、並びに廃棄物管理に関するデータベース群を構築、改良し、国内外に向けて公表することを目的として取り組む。
1)国際的な金属フローの移動量を視覚化するデータベースを公表する。また、これまでに構築してきた日本の一般廃棄物データベース、アジア・太平洋地域における開発途上国の都市廃棄物データベースが国内外で広く閲覧、活用されるよう、継続的に改良する。

課題代表者

大迫 政浩

  • 企画部
  • フェロー
  • 工学博士
  • 工学
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担当者