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既存医薬品の生態毒性影響評価の実施に基づく新医薬品の環境影響評価予測系の構築に関する研究(令和 3年度)
Development of the prediction system for environmental effects by new drugs based on the evaluation results of environmental toxicity by existing drugs

研究課題コード
1921KE001
開始/終了年度
2019~2021年
キーワード(日本語)
生態毒性,定量的構造活性相関,人用医薬品
キーワード(英語)
ecotoxicity,QSAR,human drugs

研究概要

本研究では、国内において処方量が多い医薬品等を対象とした全国の水環境モニタリングを行い,さらに高濃度検出地点における季節変動を調査する。また,QSARやカテゴリーアプローチ等インシリコ評価を効率的に行うために有用な医薬品を選定して、それらについて集中的に環境毒性試験を直接実施する。それらのデータを活用することにより現状の医薬品使用量等に対応したより精度の高いインシリコ予測手法を開発可能となる。上記の最新の知見に基づいたデータベースならびに開発した環境動態・環境影響予測システムを公開することにより、新薬の開発における環境影響評価予測(リスク評価の指標)の実施や、環境毒性試験の実施対象を効率よく選定するためのガイドラインなどを策定することが可能になり、医薬品開発における環境影響評価試験の省略による新薬開発の効率化につながることが期待される。さらに、既存薬についてもWSSD2020目標達成の道筋をつけることができ、さらに既存薬の環境影響評価政策で欧米より先行できると考えられる。

研究の性格

  • 主たるもの:行政支援調査・研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

既承認のヒト用医薬品及びその代謝物の水環境中動態、存在実態、生態毒性プロファイル等に関する情報のデータベース化を更新しつつ、不足するデータは効率的かつ戦略的に実試験を実施することにより、インシリコ手法を活用した既存・新規ヒト用医薬品の環境リスク評価系の構築を行う。

ヒト用医薬品の水環境モニタリングおよび水環境動態予測手法の構築:研究分担者 五十嵐良明
2019年度は、これまでの研究で確立したLC/MS/MSによる一斉分析法に,国内で処方量が多い医薬品を追加して、全国の河川水および下水処理場放流水の調査(全国モニタリング)を実施する。また、2020年度からは,全国モニタリングによって医薬品が高濃度で検出された地点を対象に、検出濃度の季節変動を調査する。
一方、2019年度からヒト用医薬品の水環境中動態を予測するためのパラメータ(水溶解度、log Kow,log Kocおよび水中光分解半減期)を収集する。情報が特に限定されている水中光分解半減期については、OECDガイドラインに従った実験室内での模擬試験を実施して情報を取得する。また、収集したパラメータを基にヒト用医薬品の水環境動態予測モデルを用いて水環境中での物質収支および残存率を予測する手法について検討を行い、2021年度に環境動態予測モデルを確立するとともに、ヒト用医薬品の環境動態データベースを構築する。

効率的な試験戦略の検討とヒト用医薬品の生態毒性試験の実施:研究分担者 山本裕史
これまでに我々が開発してきたヒト用医薬品の生態毒性データベース、化学物質の生態毒性試験データ、QSARモデル、専門家の知見などを高度に統合して、QSARやカテゴリーアプローチ等のインシリコ手法による環境毒性評価の適用範囲拡大・予測精度向上のために有用な医薬品構造クラスを特定して優先順位等を設定して、各年度に対象医薬品を選定し生態毒性試験(急性毒性試験を中心に、一部については慢性毒性試験)を実施する。優先順位の設定は、モニタリングデータ等に基づいて環境中濃度が高く、かつQSARやカテゴリーアプローチの適用による毒性予測が困難と考えられる既承認の医薬品を優先する予定である。さらにこれまでに開発したヒト用医薬品の生態毒性データベースを活用して、毒性試験実施により得られたデータと比較解析することにより、急性毒性から慢性毒性への外挿、種間外挿等の妥当性も検証しながら効率的な試験戦略の考え方を提案する。

ヒト用医薬品の総合的な環境リスク評価系構築及び研究総括:研究代表者 広瀬明彦
研究期間を通して、最新のヒト用医薬品とその代謝物についての文献や欧州医薬品庁EMAの公開レポート等および、分担研究から得られるから生態毒性試験データも収集しデータベースをアップデートする。特に現状の環境中で検出されている医薬品をカテゴリ評価することに焦点を当てて、新規に収集した生態毒性データと医薬品の作用メカニズム等を統合的に解析して、QSARやカテゴリーアプローチ等インシリコ評価の適用範囲の精緻化・予測精度向上を図る。2020年度以降は、QSAR、カテゴリーアプローチ等予測手法を我が国で大量に処方される主要な医薬品並びに新規医薬品の環境リスク評価へ活用するため、OECDのIATA Case Studies Project等の国際動向を取り入れた具体的な医薬品を例示としてケーススタディ評価を試行する。最終年度は、医薬品化学、QSAR、生態毒性、環境動態等の専門家を含めてケーススタディのレビューを行い、ヒト用医薬品の環境リスク評価書のサンプルを作成する。さらに研究代表者として、本研究開発事業の進捗管理と取りまとめを行う。

今年度の研究概要

研究分担者として、ヒト用医薬品10種程度についてムレミカヅキモを用いた藻類生長阻害試験、ニセネコゼミジンコを用いた繁殖阻害試験、ゼブラフィッシュを用いた魚類胚・仔魚期短期毒性試験(魚類については、一部は初期発達段階試験)を実施し、QSAR等の生態毒性予測に役立てる。

外部との連携

国立医薬品食品衛生研究所 広瀬明彦(研究代表者)
国立医薬品食品衛生研究所 五十嵐良明(研究分担者)

関連する研究課題

課題代表者

山本 裕史

  • 環境リスク・健康領域
  • 領域長
  • Ph.D.
  • 化学,生物学,土木工学
portrait

担当者

  • 渡部 春奈環境リスク・健康領域
  • 山岸 隆博環境リスク・健康領域
  • 小塩 正朗
  • 高橋 裕子
  • 八木 文乃