ユーザー別ナビ |
  • 一般の方
  • 研究関係者の方
  • 環境問題に関心のある方

わが国の脱炭素社会実現に向けた都道府県の脱炭素計画に係る課題の統合的分析(令和 5年度)
Analysis of Japan

予算区分
1-2302
研究課題コード
2325BA012
開始/終了年度
2023~2025年
キーワード(日本語)
脱炭素社会,都道府県,モデリング
キーワード(英語)
decarbonization,prefecture,modeling

研究概要

わが国では、2020年に「2050年の脱炭素社会実現」という新しい長期目標が宣言された。この宣言を受け、今まで以上の速度で社会変容が求められる中、様々な分野で脱炭素社会実現に向けた取組が始まっている。この目標に対して、推進費1-2002では統合評価モデルAIMを用いた分析を通じ、省エネ、再エネの大量導入と電化の推進、水素・新燃料の導入による大幅なGHG排出削減の可能性を示した。その上で、GHGネットゼロの実現にはネガティブエミッション技術も必要となること、また、適切な社会変容により脱炭素社会実現の可能性を高められことも定量的に示した。国の脱炭素社会実現の宣言は、自治体の取組に対しても大きな影響を与えた。脱炭素先行地域を目指す自治体など特定の市町村では脱炭素に向けた取組が進んでいる。しかし、全ての自治体での取組にはまだ遠く、脱炭素目標を掲げた市町村ですら達成に向けた具体的措置を示した自治体は多くない。一方、都道府県については、少なくとも2030年は削減目標とその実現に向けた措置を示しており、都道府県が中心となって市町村が脱炭素への取組を促すことが、自治体での包括的で効果的な取組に繋がるものと考えられる。ただし、都道府県においても脱炭素を表明しない自治体はあり、表明した自治体においてもその多くで定量的な分析はされていない。さらに各々の地域では、専ら脱炭素に焦点が当てられ、その取組が他の環境問題に及ぼす影響(生態系への影響や廃棄物・資源問題など)を定量的に議論できていないことが多く、一部は既に地域の課題として顕在化していることも踏まえると、脱炭素と他の環境問題を統合的に分析することが必要である。以上の背景を踏まえ、本課題では国の脱炭素社会実現に向けた定量的な分析の進化とともに、それと整合した地域の脱炭素・持続可能性を議論するための情報整備と、モデル開発を行い、地域へ適用する。そのために、3つの課題を設定した。課題1では、日本の脱炭素社会実現に資する都道府県目標を定量的に分析する。課題2では、統合評価モデルAIMを用いて都道府県分析と共有可能な日本の脱炭素社会分析を実施する。課題3では、脱炭素社会実現とそれに伴い懸念される地域の課題の統合的な分析を滋賀県と東京都・首都圏を対象にして実施する。

研究の性格

  • 主たるもの:政策研究
  • 従たるもの:

全体計画

日本の脱炭素計画と整合した都道府県の脱炭素社会実現に向けて、3つの研究課題を設定し、分析を実施する。
 課題1では、日本の脱炭素社会実現に資する都道府県(地域)目標を定量的に分析するためのモデルICERを開発する。本課題で開発するICERは、これまでに開発した地域統合評価モデル(AIM/ExSS)を多地域間に拡張し、トップダウン的手法とボトムアップ的分析を組み合わせることにより、日本の脱炭素社会実現に向けた地域の役割・脱炭素計画に資する定量的情報の提供を可能にする。
 課題2では、日本を対象に統合評価モデルAIMを用いた脱炭素社会の実現について定量的な分析を実施する。主に使用するモデルは、経済モデルであるAIM/CGE、技術選択モデルであるAIM/Enduse、電源構成について分析するAIM/MOGPMである。
 課題3では、脱炭素社会実現に向けた対策の導入がその地域の他の環境課題に与える影響について定量的な分析を実施する。地域は脱炭素社会の定量的な分析を試みている東京都(首都圏)と滋賀県を取り上げる。
2023年度は、分析に必要となるデータの収集、整備を行い、モデル開発を行う場合は、中心となる部分の定式化を行う。2024年度は、2023年度に引き続きモデル開発を行い完成させる。モデルを用いて、中心となる分析結果を示す。2025年度は2024年度までに得た課題1から課題3の分析結果を踏まえた分析結果の更新と異なるケースについての分析を実施し、課題全体のとりまとめを行う。

今年度の研究概要

2023年度は、分析に必要となるデータの収集、整備を行い、モデル開発を行う場合は、中心となる部分の定式化を行う。
<課題1>都道府県単位の情報(IO表やエネルギーなど各分野統計、再エネ(現況とポテンシャル)、現行計画等)を整備する。ICERのモデル構造の基本設計(全体構造、各都道府県及び都道府県間のフローの定式化)を行う。
<課題2>需要側の固有のセグメントに応じた対策分析のために資する情報(建物:建物種類・用途、気候区分など、移動:移動距離・目的など)の収集・加工。さらに技術モデルを用いた多様なセグメントに応じたエネルギー需要分析を実施。
<課題3 東京>基準年のエネルギー需給構造を詳細に推計。また、東京電力管内の再生可能エネルギーの発電可能量を推計。太陽光パネル、電気自動車の現状のリユース、リサイクルの動向を調査。
<課題3滋賀>地域資源(自然・人工物・人)のストック及びそれが供給するサービスの関係のモデル化。また、社会経済活動における自然資源からのサービス供給である生態系サービス需要を推計。

外部との連携

東京都環境科学研究所、滋賀県琵琶湖環境科学研究センター

課題代表者

金森 有子

  • 社会システム領域
    脱炭素対策評価研究室
  • 主幹研究員
  • 工学博士
  • 土木工学,社会学
portrait

担当者