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2019年10月28日

有害性・資源性物質の動きをとらえて循環資源の適正管理を考える

特集 資源循環における随伴物質の環境影響評価と適正管理

寺園 淳

 私たちが資源を消費したり廃棄物の処理やリサイクルを行ったりする際、様々な問題を考えねばなりません。例えば、資源の利用は持続的に可能であるか、埋立地はあと何年使えるか、などの問題がありますが、最近ではプラスチックが海洋などの生態系に与える影響も考えねばならなくなっています。ここで私たちは、資源を利用するにあたって人や環境にどのような影響があるかといった問題を取り上げたいと思います。

 人や環境に影響を与える原因物質には、鉛などの重金属や、ダイオキシン類や難燃剤などの残留性有機汚染物質(POPs)によるものがあります。金属の方は有害性とともに資源としての価値を有する物質であることも多く、このような有害性・資源性を有する物質が処理やリサイクルの過程でどの程度回収されるか、そして大気・水を通じてどのように環境中に排出されるかを考えることが重要になります。こうして、有害性・資源性を有する物質の挙動を把握しながら、目で見える大きさの循環資源(循環的に利用すべき廃棄物という意味)の適正な管理のあり方を考えています。これが第4期(2016~2020年度)の中長期計画期間において、私たちが資源循環研究プログラムの中で進めているプロジェクト2「循環資源及び随伴物質のフロー・ストックにおける資源保全・環境影響評価」です。

 具体的な研究対象として、主に電気電子機器という循環資源を取り上げています。ベトナムなどの途上国では不適正なリサイクルが行われ、電気電子機器に含まれていた重金属や難燃剤などが周辺に放出されたり、電線の野焼きによってダイオキシン類が発生したりして、作業者への曝露や、環境及び食品を通じて、住民の健康に影響を与える可能性が懸念されています。日本においては家電リサイクル施設で適正なリサイクルが行われることがほとんどですが、現在は未規制ながら今後知見の集積で規制される可能性のある臭素化ダイオキシン類や難燃剤まで含めて、場内で発生するダストや排水の管理がどの程度であるかについての調査も行っています。このような電気電子機器については、貴金属などの資源性物質をいかに効率よく回収するか、エアコンや冷蔵庫に含まれる冷媒フロン(主に代替フロン)の放出をどのように抑えて地球温暖化を防ぐか、といった観点も含めた総合的な対策を国内とアジア諸国で検討しています。また、これらのリサイクルの過程で発生するプラスチックは中国に輸出されてリサイクルされるものも多かったために、中国の廃棄物輸入規制強化を契機に、国内でどのようにリサイクルを進めるかも重要な研究テーマになっています。このほかにプロジェクト2では、産業廃棄物の処理に由来する重金属などの有害性物質の挙動把握に関する研究も行っています。

 本特集では国内の家電リサイクルに関する研究の一端を「研究プログラムの紹介(電気電子機器の適切な再資源化にむけて:国内の家電リサイクル施設の調査結果から考える)」で紹介します。次いでベトナムでのリサイクルによる環境影響についての研究を「研究ノート(ベトナム・使用済み電気製品のリサイクル村でプラスチック難燃剤による環境曝露を調べる)」で紹介します。最後に、残留性有機汚染物質については「環境問題基礎知識(『残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約』とプラスチック~条約発効から15年が経過、新たな局面へ~)」で解説します。


(てらぞの あつし、資源循環・廃棄物研究センター副センター長)

執筆者プロフィール

筆者の寺園淳の写真

2002年から中国など海外へ輸出される廃プラスチックや家電製品などを調査してきましたが、昨年から風景が一変しました。プラスチックへの関心の高まりとともに、適正な資源循環を進めるきっかけになればと思います。
個人的にも資源、時間、健康を大切にするのが目標です。

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