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2019年10月28日

第4回 国際アドバイザリーボード助言会合(IAB2019-JECS)開催報告

【行事報告】

磯部 友彦

 国立環境研究所(以下、国環研)では、科学的・学術的な貢献、課題解決を意識した研究展開、国際的な協力関係や研究計画の方向性等について、幅広い知見を持った海外の学識者から助言を得るため、2015年度より国際アドバイザリーボード(IAB)助言会合を開催しています。今回の助言会合は、2011年度より国環研にコアセンターを設置して全国で実施しているエコチル調査研究事業について助言をいただくためのIAB分科会と位置づけ、2019年9月2日と3日に国環研(大山ホール)で開催しました。

 IAB委員は、以前の助言会合でも議長をつとめていただいたDr. Linda Birnbaum(National Institute of Environmental Health Sciences、米国)に今回も議長をお願いし、Prof. Åke Bergman(Stockholm University、スウェーデン)、Dr. Ghislaine Bouvier(Bordeaux University、フランス)、Dr. Marike Kolossa-Gehring(German Environment Agency、ドイツ)、Dr. Per Magnus(Norwegian Institute of Public Health、ノルウェー)、Prof. Sjurdur F. Olsen(Statens Serum Institut、デンマーク)、Dr. Michael Borghese(Health Canada、カナダ)、Dr. Kim Suejin(National Institute of Environmental Research、韓国)、Prof. Leonardo Trasande(New York University、米国)を加えた計9名の有識者にお引き受けいただきました。いずれの委員も、各国の大規模出生コホート調査(ある期間に生まれたグループを対象とした追跡調査)や人を対象としたバイオモニタリング、化学物質曝露の健康影響評価の分野で研究代表者やプロジェクトリーダーを務めており、当該分野における世界的権威として著名な方々です。

 初日の午前中には、渡辺理事長から国環研の概要や今中長期目標期間で実施しているプログラム研究等について紹介し、それに続いてエコチル調査運営委員長の上島通浩教授(名古屋市立大学)からエコチル調査計画当初の研究計画や実施体制などについて説明がありました。さらに、中山祥嗣コアセンター次長より全体調査や詳細調査の研究デザインや現在のフォローアップ状況、これまでに公表された論文等の概要について説明があり、IAB委員からコメントと質問をいただきました。その中で、「出生コホートとしては世界で最も規模の大きい3つの調査のうちのひとつで、他の2つの調査と比べてより最近の状況を調べることができる」、「他の大規模出生コホート調査と比べて多種、多数の生体試料を採取しており、これらの試料の保管、管理、活用は世界的財産となり得る」などの非常にポジティブなコメントをいただきました。午後は、所内施設等を見ていただいたあと、各委員から各国で取り組んでいる出生コホートやバイオモニタリングについてご紹介いただき、それぞれの現状について情報交換するとともに、改めてエコチル調査の規模や期待の大きさについて認識することができました。

集合写真1
写真1 IAB委員と国環研関係者、メディカルサポートセンター、ユニットセンター関係者の集合写真
渡辺理事長による説明の写真
写真2 渡辺理事長による説明
IAB助言会合会場の写真
写真3 IAB助言会合会場での議論の様子

 2日目は、エコチル調査で現在実施している曝露評価と進捗状況、そこから得られた成果、今後の計画や方針について、委員からコメントや助言をいただきました。「ここまでの成果としては順調に得られている」、「スタッフ数が限られる中で多様なテーマに取り組めている」といったポジティブなコメントがあった一方で、「調査規模や研究テーマの多様性を考えるとコアセンターのスタッフ数は現状の2倍程度は必要」、「多様な分野を専門とする職員(特に社会科学系の研究者)を雇用して今後の研究計画策定やデータ解析等を進めるべき」、「将来的な生体試料活用を想定してバイオバンクを設立すべき」、「現在の計画では調査終了時に参加者がアウトカムの評価に十分な年齢に達しないため、参加者が成人し次世代を残す年齢に至るまでこの調査は継続しなくてはいけない」といった助言をいただきました。最後に、森口理事からIAB委員に対して謝意に加えて、いただいた助言を参考にエコチル調査をよりよいものへと発展させるとともに関係各所へも助言内容を伝えていきたいので今後もご協力いただきたいという意向をお伝えしました。委員からは「次回は調査研究の詳細や個別の成果などについても紹介して欲しい」、「若手研究者が個々に取り組んでいる研究課題等についても助言したい」など、とても協力的な回答をいただきました。

 今回いただいた助言を参考に、今後ますますエコチル調査が充実したものとなるよう、職員一同邁進していきたいと思います。最後に、世界各国から貴重な時間と労力を割いて国環研までお越しいただき、エコチル調査の発展ために助言いただいたIAB 委員各位に感謝いたします。

(いそべ ともひこ、企画部研究推進室 研究企画主幹)