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2006年2月15日

市民と研究者と環境

 国立環境研究所の39回にわたる掲載では、一般の関心が高く重要な環境問題を選び、最近の研究成果にもできるだけふれるようにしてきました。
 21世紀は「環境の世紀」とよくいわれます。身近なところでも地球全体でも、環境は変化のスピードを速めており、自然のシステムや私たちの生活と健康に悪影響をもたらしています。このような悪影響が加速されると、私たちはもちろん、後に続く世代がもっと困難な生活を強いられることになります。原因としては、経済発展にともなう土地利用の変化や、大量生産・大量消費・大量廃棄に象徴される環境への負荷の激増などがあげられます。
 よりよい環境を維持するうえで最も大事なのは、一人ひとりが関心をもつことだと思います。
 環境は私たちにさまざまなサインを出しています。森や草原にすむ鳥や昆虫、あるいは川や池にすむ魚が少なくなることは、私たちが気づきやすいサインです。しかし、花粉や紫外線のように見えにくいサインもありますし、川や湖の水に溶ける化学物質や大気中の二酸化炭素などを見ることは不可能です。ところが、成層圏のオゾン層を含む大気環境、陸上や水中の動植物を含む環境、それに微生物が多くすむ土壌や地下水などの地下環境は、物質循環などを通して相互に関係しています。
 私たちは、環境のさまざまなサインを観察・計測し、変化の原因や影響を明らかにし、さらには悪影響を防止・緩和する方策を見出そうとしています。
 それだけでなく、望ましい環境を可能にする産業や社会の在り方、あるいは街づくりやライフスタイルについても考えています。私たちは研究をするだけでなく、環境の現状や研究成果をひとりでも多くの方に伝えたいと願っています。望ましい環境が実現できるかは、社会の在り方や一人ひとりのライフスタイルによるところが大きいからです。
 今回の連載を通して、私たちは皆さんにボールを投げたと思っています。今度は、皆さんから投げ返されるボールを受ける番です。市民の皆さんと研究者とのコミュニケーションが、よりよい環境の実現に結びつくことを期待し、愛読していただいたことへのお礼といたします。

高校生らに実験のやり方を伝授する研究者
「サイエンスキャンプ2005」

【理事長  大塚 柳太郎】
(執筆者の所属・職名は記事掲載当時のものです。)

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