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2021年3月26日

「回遊魚を指標とした森里川海のつながりと
 自然共生」(平成29~令和元年度)
国立環境研究所研究プロジェクト報告の刊行について
(お知らせ)

(筑波研究学園都市記者会、環境省記者クラブ、環境記者会同時配付)

2021年3月26日(金)
国立研究開発法人国立環境研究所
 編集分科会委員長:江守 正多
 編集分科会事務局(環境情報部情報企画室)
       室長:阿部 裕明
       担当:白井 大智
 

   国立研究開発法人国立環境研究所では、「国立環境研究所研究プロジェクト報告」として、「回遊魚を指標とした森里川海のつながりと自然共生 平成29~令和元年度」を刊行します。
   サケの仲間などの回遊魚に焦点を当て、ダムや堰によって分断された河川環境の修復・再生技術を環境DNA法によって評価しました。さらにこの手法による魚類相推定を北海道全域に展開しました。一方で、絶滅の危機に瀕する希少種イトウの海と川との間の回遊行動を新規的な手法によって解明しました。森里川海のつながりが持つ意味、その自然共生社会における役割の一面を科学的に明らかにし、本報告書にまとめました。

1.「回遊魚を指標とした森里川海のつながりと自然共生 平成29~令和元年度」の概要

 河川に暮らす生き物の多くは森里川海のつながりに大きく依存しながら進化し、種を存続させ、今ある生物多様性を形作ってきました。一方で私たち人類はその“つながり”から様々な恩恵-生態系サービス-を享受する文化を育んできました。海と川を行き来するサケの仲間の多くは、北海道の地域経済を支える重要な水産資源です。また同じくサケの仲間の巨大魚イトウは幻の魚とも呼ばれ、釣りの対象として高い人気を博していますが、環境省と国際自然保護連合は本種を絶滅危惧種に指定しています。水産資源であるサケやマスも希少種イトウも“つながり”が失われれば住んでいた川から姿を消してゆく-つまり地域的な絶滅を余儀なくされる-ことになります。北海道だけでも数万基あるとされるダムや堰などの構造物は生物多様性と生態系サービスに対する深刻な脅威です。
 本研究プロジェクトは、北海道のサケの仲間に焦点を当て、森里川海のつながりを分断するダムや堰からの影響緩和を目的として設置された魚道や改良工事の効果を環境DNAにより検証しました。また全道の約300河川についても、この手法により魚類相を推定することに成功しました。希少種イトウについては、骨に蓄積された微量元素の安定同位体分析、また産卵遡上した親魚の電子標識による行動追跡を通して、謎の多かった回遊生態に関する新たな知見を得ることができました。
 本プロジェクトの成果や開発された研究手法は、サケ・マスのような水産資源の管理や、希少種イトウの絶滅要因の特定、絶滅回避策の策定に役立つと考えています。さらに全道に造られたダムや堰などの位置情報と環境DNAから推定された魚類分布を合わせて可視化することで、さらなる研究成果がもたらされることも期待されます。

●本報告書の研究課題代表者
 福島 路生(ふくしま みちお)
  国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター 生態系機能評価研究室 主任研究員

2.本報告書の閲覧及び問い合わせ先

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