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環境回復研究プログラム(平成 27年度)
Environmental Recovery Research Program

予算区分
AS 災害環境研究
研究課題コード
1415AR001
開始/終了年度
2014~2015年
キーワード(日本語)
環境放射能汚染,放射性物質,多媒体環境,生物・生態系影響,人曝露,管理システム,放射性物質汚染廃棄物
キーワード(英語)
Environmental radioactive contamination, Radioactive substances, Multimedia environment, Impacts on organisms and ecosystem, Human exposure, Management systems, Radioactively contaminated off-site wastes

研究概要

東日本大震災によって生じた環境被害、環境中に放出された放射性物質による環境汚染、その汚染が生物や人の健康に与える影響、汚染の除去のための技術や汚染廃棄物の処理技術など、被災地の環境回復に関する環境研究の分野は幅広くかつ取り組むべき緊急性も高い。そのため、(1)放射性物質に汚染された廃棄物等の処理処分技術・システムの確立、(2)放射性物質の環境動態解明、被ばく量の評価、生物・生態系への影響評価、に総合的に取り組み、東日本大震災の被災地の復興と環境創造に対して環境研究の面から貢献し、その研究成果により大地震等の災害が発生した際の人や環境への被害の回復や環境汚染対策等の環境政策に貢献できるようにする。

研究の性格

  • 主たるもの:行政支援調査・研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

(1)放射性物質に汚染された廃棄物等の処理処分技術・システムの確立
東日本大震災により被災地各地に発生した災害廃棄物や、福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性物質に汚染された廃棄物や土壌等(以下「汚染廃棄物等」という。)の処理処分の推進が危急の課題となっている。そこで、現地調査、基礎実験、フィールド実証試験及びシステム分析等により、各処理処分プロセスにおける放射性物質の基礎物性・挙動メカニズム、処理処分・再生利用技術、測定分析・モニタリング技術、関連処理施設の長期的管理・解体等技術、廃棄物等の資源循環システムにおけるフロー・ストックと放射性物質の統合的管理方策、及び円滑な処理処分に資するマネジメント・リスクコミュニケーション手法等に関する調査研究を実施する。これらを通じて必要な科学的知見を集積し提供することにより、現下の喫緊の課題である汚染廃棄物等の適正かつ円滑な処理の推進、さらには将来の大規模災害時における廃棄物処理に適切に対応するための国等による指針や計画の策定等に貢献する。
1) 汚染廃棄物等に含まれる放射性物質の熱力学特性、溶出特性、吸脱着特性等を把握するとともに、各処理処分プロセスでの放射性物質の挙動メカニズムを解明し、汚染廃棄物等の適正な処理を行う上で基盤となる科学的知見を提供する。
2) 汚染廃棄物等の各処理処分プロセス(保管・貯蔵、中間処理、再生利用、最終処分等)において、熱化学的及び物理的手法による減容化や分離、固型化、隔離等様々な制御技術の開発・高度化・評価を行い、実用化可能な技術を確立する。
3) 焼却等の熱処理施設や最終処分施設等、汚染廃棄物等の関連処理施設内における放射性物質の蓄積・移行等の特性及びメカニズムを明らかにするとともに、施設の長期的な維持管理や解体撤去・廃止手法確立のための科学的知見を提供する。
4) 様々な廃棄物等の試料の線量率や放射能濃度等の測定分析方法を検討し、試料の採取方法を含めて目的に応じた最適な測定分析・モニタリング手法の標準化・体系化を図る。
5) 地域における資源循環・廃棄物処理に伴う様々な汚染廃棄物等とそれらを媒体とした放射性物質のフロー・ストックを把握するとともに、被ばくリスク低減と両立する統合的な放射線管理方策を提示し、資源循環システムを基調とした地域再生に資する知見を提供する。
6) 災害時における廃棄物等管理を中心に、予防対応・応急対応・復旧復興対応の円滑化に資するマネジメント手法及び制度の設計・評価と、社会全体の変革に資するリスクコミュニケーション手法とその基盤となる仕組みづくりに関する知見を提供する。

(2)放射性物質の環境動態解明、被ばく量の評価、生物・生態系への影響評価
福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境汚染に対処し環境を回復するためには、環境中の放射性物質の実態を把握し、その動態を解明することによって今後の動向を予測するとともに、放射線被ばく量や生物・生態系への影響を評価し、その推移を長期的に把握することが課題となっている。そこで、放射性物質に汚染された土壌、森林、河川、湖沼等の汚染実態と環境動態を把握するために、汚染程度の異なる流域圏を対象として、モデリング、環境動態計測、データ解析を統合した研究を推進する。そのために、放射性物質の環境計測手法を確立して、各環境媒体における放射性物質等の環境動態計測を実施する。また、この測定結果をもとに、放射性物質の環境媒体間の挙動を解析する多媒体環境モデルを構築する。これらの動態計測とモデルにより、環境多媒体での汚染実態と環境動態を把握し、将来動向を予測する。更に、人への被ばく量の広域的な推計手法を開発して被ばく実態を把握するとともに、生物・生態系に対する影響評価手法を検討し遺伝的影響等に関する研究を進める。これらを通して、国や自治体が実施する環境回復に係る施策の推進を科学的側面から支援する。
1) 環境中における放射性物質の分布、移行や蓄積の実態を把握するとともに、?の多媒体環境モデル構築に使用する環境計測データを取得するために、汚染の程度が異なる複数の流域圏における放射性物質の動態を解明する。
2) 放射性物質の環境動態を把握・予測するために、?の環境計測データを活用して、大気、陸域、沿岸海域における震災発生直後からの放射性物質の環境動態を予測する多媒体環境モデルを構築し、長期間の汚染予測、対策効果の評価等を進める。
3) 福島第一原子力発電所の事故によって放出された放射性物質の人への被ばく量を評価するために、居住環境を含めた環境測定を実施するとともに、多媒体動態モデルや広域環境計測結果を取り入れた被ばく量推定モデルを構築し、広域的・長期的な被ばく量解析を実施する。また、環境中の放射性物質の測定法を開発する。
4) 環境中に放出された放射性物質による生物・生態系に対する影響を把握するために、植物やほ乳類を対象とした野外調査・実験等を実施し、遺伝的影響等を明らかにする。

今年度の研究概要

(1)放射性物質に汚染された廃棄物等の処理処分技術・システムの確立
放射性物質に汚染された廃棄物・土壌等について、現地調査、基礎実験、フィールド実証試験及びシステム分析等により、放射性物質の基礎物性・挙動特性等を踏まえた、各処理プロセス(保管、減容化、再生利用、貯蔵、最終処分等)における制御技術・システムの開発・高度化・評価、関連処理施設の長期的管理及び解体・廃止等手法に関する調査研究を行うとともに、測定分析・モニタリング技術、廃棄物処理・資源循環システム全体でのフロー・ストック及び放射性物質管理方策、リスクコミュニケーション手法等に関する調査研究を実施する。これらを通じて必要な科学的知見を集積し提供することにより、現下の喫緊の課題である汚染廃棄物等の適正かつ円滑な処理の推進等に貢献する。
1) 除染廃棄物等の熱処理について、室内実験や施設調査により熱処理時の放射性セシウム挙動実態を明らかにするとともに、マルチゾーン熱力学平衡計算を適用して化学種の特定も含めた予測を行う。不燃系廃棄物で量が多いコンクリートについて、実コンクリートへの放射性セシウムの浸透状況解析や浸透試験を行い、除染手法検討に必要な知見を得る。セシウム溶出性の高い焼却飛灰について、中間貯蔵の前処理としての活用も想定した洗浄技術の適用性等を明らかにするとともに、指定廃棄物の最終処分や中間貯蔵におけるコンクリート構造物等が備えるべき技術的要件等を整理する。除染廃棄物や災害廃棄物の保管、
貯蔵における溶出挙動や土壌層の吸着特性について、実験等により長期的な挙動を把握す
るとともに、長期予測手法の確立を行う。
2) 焼却施設内の耐火物・付着物等への放射性セシウム等の蓄積調査を行い、蓄積状況の整理と蓄積メカニズムの解明を進め、被ばく・汚染拡大防止の観点から維持管理・解体手法を提示する。除染廃棄物等の中間貯蔵における放射性セシウムの長期的な挙動予測手法を確立するとともに、汚染廃棄物最終処分場の維持管理や廃止確認、跡地利用に係る技術要件を提示する。
3) 製品系廃棄物やサイズの大きな廃棄物について、放射線量や表面密度、放射能濃度の適切な測定手法に関する各種情報の整理とともに事例調査を行う。廃棄物・副産物の発生から処分・再生利用までの処理過程での放射性物質のフロー・ストックの実態把握、分析モデルの作成を行い、フロー・ストックの長期的推移の推計、分析を進める。汚染問題に関する社会認識や、汚染廃棄物処理等に関する関係地域住民等の反応について、社会科学的調査手法の適用により分析整理し、リスクコミュニケーションのための基礎的知見を得る。

(2)放射性物質の環境動態解明、被ばく量の評価、生物・生態系への影響評価環境回復放射性物質に汚染された土壌、森林、河川、湖沼、沿岸等の汚染実態と環境動態を把握し、将来動向を予測するために、汚染程度の異なる流域圏を対象として、多媒体環境モデリング、環境動態計測、環境データ解析を統合した研究を推進する。また、人への被ばく量の広域的な推計手法を開発して被ばく実態を把握する。更に、放射性物質による生物・生態系に対する影響に関する研究を進めるとともに、無人化や除染による生態系変化や生態系管理に関する研究に着手する。これらを通して、国や自治体が実施する環境回復に係る施策の推進を科学的側面から支援する。
1) 環境中における放射性物質の分布、移行や蓄積等の実態を把握するとともに、?の多媒体環境モデル構築に使用する環境計測データを取得するために、汚染の程度が異なる複数の流域圏における放射性物質の動態を把握する。
2) 放射性物質の環境動態を把握・予測するために、?の環境計測データを活用して、大気、陸域、沿岸海域における震災発生直後からの放射性物質の環境動態を予測する多媒体環境モデルの構築を進める。
3) 福島第一原子力発電所の事故によって放出された放射性物質の人への被ばく量を評価するために、居住環境を含めた環境測定を実施するとともに、環境計測結果等を取り入れた被ばく量推定モデルを構築し、広域的な被ばく量解析を実施する。また、環境中における放射性物質の測定法の開発を進める。
4) 環境中に放出された放射性物質による生物・生態系に対する影響を把握するために、野生生物を対象とした野外調査・実験等を実施し、遺伝子への影響等を明らかにする研究を進める。更に、無人化や除染によりかく乱された生態系の変化の評価・予測や生態系管理に関する研究に着手する。

外部との連携

福島県、日本原子力研究開発機構など多数

課題代表者

大原 利眞

担当者