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2018年2月28日

国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第23回締約国会議(COP23)
京都議定書第13回締約国会合(CMP13)
パリ協定第1回締約国会合再開会合(CMA1-2)
参加報告

衛星観測センター 松永恒雄・厖 世娟
社会環境システム研究センター 藤野純一・福村佳美・亀山康子

はじめに

 2017年11月6~17日にかけ、ドイツのボンで、表題の3会合ならびにこれらの補助機関会合が開催されました。今年6月に米国トランプ政権がパリ協定からの脱退を表明して以降、初の締約国会議(COP)として注目されましたが、会議の大半は、来年COP24までに合意を目指しているパリ協定関連の詳細ルールや、排出削減に向けた進捗を議論する促進的対話「タラノア対話」の今後の進め方など、手続き的な議論に費やされました。国環研からは、本報告著者含め総勢10名が参加し、サイドイベント等で数多くの研究成果を発信しました。以下、同会議での国環研の活動を紹介します。

(1)衛星観測に関する研究事業関連

 研究事業連携部門に属する衛星観測センターでは、「衛星観測に関する研究事業」の一環として、サイドイベント開催とNGO等展示エリアにおける展示という2種類の活動を実施しました。

 11月7日(火)には日本パビリオンにおいて「パリ協定に資する最先端の衛星観測と科学的知見— IPCCインベントリー・ガイドラインへの取り組みを中心に」と題するサイドイベントを文部科学省、環境省、宇宙航空研究開発機構、日本気象協会とともに開催しました。本イベントではIPCCが現在作業を進めている国別温室効果ガスインベントリガイドラインの改訂を背景に、我が国の温室効果ガスに関する衛星観測やモデル研究の最新動向、パリ協定・インベントリ分野での衛星観測データの利用に向けた取組みを紹介することを目的としました。衛星観測センターからは松永が「衛星リモートセンシングデータの定常的利用に向けて:温室効果ガス排出インベントリの検証における衛星温室効果ガス観測データの使用に関するガイドブック」と題する講演(写真1)を行い、温室効果ガス観測技術衛星(いぶき、GOSAT)等を含む各国の温室効果ガス観測衛星プロジェクトや現在環境省とともに作成を進めているガイドブックの紹介を行いました。本ガイドブックについては10月末にドラフト版が公開されたばかりというタイミングでもあり、本イベントの後も含めて多数のご質問、ご意見をいただくことができました。

 展示はスペース等の制約からできるだけ複数の組織の合同展示とするようにというUNFCCC事務局からの要請もあり、(一財)リモート・センシング技術センターとの合同展示という形で行いました。今回は特に温室効果ガスと森林の衛星観測に絞り、これらを紹介する動画をディスプレイで上映したほか、我が国の地球観測衛星である「いぶき」「だいち」「だいち2号」で観測されたデータ等にアクセスするためのQRコードを挿入したポスター、バナースタンド等を掲示しました(写真2)。またサイドイベントで紹介したガイドブックの見本も見られるようにし、本展示ブースを訪れた方々と様々な意見交換をしました。

写真1 日本パビリオンでのサイドイベントにおける松永の講演の様子
写真2 (一財)リモート・センシング技術センターと合同で出展した展示ブースの様子

(2)低炭素研究関連

 今回は日本パビリオンで3つのサイドイベントを行いました。1つ目は、10日に開催した「脱炭素・持続可能な発展に向けた都市の取り組み-日中韓 脱炭素都市共同研究の紹介-」です(写真3)。COP22での日中韓三大臣による、パリ協定を踏まえた三カ国共同研究立ち上げに関する宣言を受け、都市を対象にした研究プロジェクトについて議論を進めてきました。本イベントでは日中韓の政府関係者、研究機関、そして都市(東京都、富山市)の関係者が研究プロジェクトを準備するにあたっての活動案と期待を共有し、COP24での報告を目指すことをまとめとしました。

 2つ目は、13日に開催した「アジアの都市を低炭素先進都市にする-日本・アジアの都市間連携を中心とした取り組み-」です。弊所らが支援してきたマレーシア・イスカンダル開発地域の低炭素社会実行計画が実施の段階に移っている最新状況がイスカンダル開発長官から紹介された後、その時に培った手法がクアラルンプール市等に展開されている様子をマレーシア工科大学Ho教授が発表しました。ホーチミン市からはJICAの支援等により気候変動実行計画の立案およびその実施が進む一方さらに支援が必要な様子が、東京都からは建築物の対策制度の導入をイスカンダル開発地域に進めてきた経験が、富山市からはインドネシア・スマラン市において富山市の小水力や交通のノウハウを現地に適用し具体のアクションにつなげるJCMフィージビリティ—スタディの展開について、それぞれ報告が行われました。最後に藤野からスマラン市を対象とした低炭素都市シナリオの試算結果をまとめた冊子を公表しました。

 気候変動の悪影響は、国や地域の社会経済的リスクを高め、より脆弱なものにすると考えられています。外務省は、当所はじめ国内の多くの研究機関の協力を得て今年9月、報告書「気候変動に伴うアジア・太平洋地域における自然災害の分析と脆弱性への影響を踏まえた外交政策の分析・立案」を公表しました。そこで3つ目のイベントとして、外務省と共催でこの報告書に関するサイドイベントを実施し、国外にも周知する機会を得ました。

 その他、当所主催ではないものの、ドイツの研究機関 NewClimate Instituteらが主催するサイドイベントに演者の一人として出席し、2030年排出量目標と国家間の衡平性との関係について、推進費研究の最新成果を踏まえて発表し、パネルディスカッションにも参加しました。

写真3 日中韓脱炭素都市のサイドイベントでの質疑の様子(左の登壇者が藤野)

(3)アジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム(AP-PLAT)紹介

 政府は、平成25年に「気候変動の影響への適応計画」(適応計画)を閣議決定し、科学的知見の充実や関連情報の提供による理解促進を行うとともに国内各地での適応の推進とあわせて国際協力・貢献の推進を行うこととしています。国立環境研究所ではこの取り組みを支援するため、平成28年8月に適応に関する情報を一元的に発信するポータルサイト、気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)を立ち上げました。前年COP22、環境省は、適応計画で謳われる国際協力・貢献の推進を実施するため、アジア太平洋域での適応推進を目的とした情報基盤AP-PLATを2020年までに構築することを発表しました。それを受け、気候変動戦略連携オフィスは、A-PLATの構築・運営で得られた知見を活かし、同プラットフォームの活動を支援するポータルサイト「アジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム」(AP-PLAT)の立ち上げ準備を進めています。15日(水)サイドイベントにて、肱岡室長がAP-PLATのデモサイト概要を世界に発信しました(写真4)。

 今回、COP23で紹介したAP-PLATデモサイトでは、Web-GISを用いて、環境研究総合推進費S-10「地球規模の気候変動リスク管理戦略の構築に関する総合的研究」(ICA-RUS)の影響評価情報、環境省のアジア太平洋域における委託業務の成果、またアジア諸国の適応計画等を盛り込んでいます。その発表を受け、サイドイベントにパネリストとして参加したタイ王国環境省やアジア開発銀行(ADB)、国連環境計画(UNEP)等の関係者らからは、早期構築への期待とともにAP-PLATとの連携を求める声が寄せられました。

 AP-PLATは今後、すでに国際的に適応に関する活動を展開している世界適応ネットワーク(GAN)やアジア太平洋地域適応ネットワーク(APAN)をはじめ、同じくCOP23で開設を発表した国際気候変動適応センター(GCECA)と協力し、アジア太平洋域の適応取組を支援していくことを目指します。
 

写真4 サイドイベントのパネリストら(肱岡室長、左端)と中川大臣(右から3人目)

(4)ウェブサイト

 これらの活動の詳細は、国環研ウェブサイトに掲載されています、また、COP23の会議の内容に関しては、地球環境研究センターニュースでも取り上げられる予定です。ぜひ一度アクセスしてみてください。

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