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2011年10月31日

第2期中期計画(2006〜2010年度)のアジア環境研究の成果および国際共同研究の概要

Summary

1.重点研究プログラム

 第2期中期計画期間のアジア環境研究は、主に重点プログラムである「地球温暖化」「循環型社会」「アジア自然共生」研究プログラムと関連する研究領域で行われました。各研究プログラムにおいて、アジア環境研究を行っている主な中核研究プロジェクトについて、成果の概要を示します。

①地球温暖化研究プログラム
 中核研究プロジェクト「温室効果ガスの長期的濃度変動メカニズムとその地域特性の解明」では、CO2だけではなく酸素濃度を精度良く測定することによってCO2の収支を定量的に解明した他、CO2センサーを搭載した日本航空(JAL)の航空機によってアジア太平洋域の鉛直分布観測や季節変動を明らかにしました。また、沖縄の波照間や北海道の落石岬の観測所での連続観測データを用いて、アジア地域の温室効果ガスの排出や吸収量の分布や時間的な変化が明らかになりました。

 中核研究プロジェクト「脱温暖化社会の実現に向けたビジョンの構築と対策の統合評価」では、気候安定化レベルとそれに必要な世界の排出シナリオを検討し、世界で2050年50%削減、我が国で60から80%の削減という目標を設定しました。そして、我が国のシナリオ作成プロセスを報告書としてまとめ、中国、インド、インドネシア、マレーシアなどのアジア主要国の低炭素社会シナリオ作成に適用しました。シナリオ開発にあたっては、国環研がモデルを提供し、協力機関・研究者が低炭素シナリオを開発し、政策担当者との議論を通じて、各国での低炭素社会の実現に貢献すべく研究を進めてきたことが特徴です。

②循環型社会研究プログラム
 中核研究プロジェクト「国際資源循環を支える適正管理ネットワークと技術システムの構築」では、国際共同研究によって、アジア各国内における電気電子機器廃棄物(E-waste)のリユース・リサイクルの実態調査を基に、各国のインフォーマルリサイクル現場をはじめとするリサイクル技術の概要や特徴を把握し、金属回収や有害物質汚染の状況及び対策を検討する情報が得られました。また、自然の力で空気を送りこんでメタン発生をおさえる埋め立て法(準好気性埋立)の実証実験をタイで行い、埋め立て初期の発生ガス量等のデータを取得するなどの成果をあげました。

③アジア自然共生研究プログラム
 中核研究プロジェクト「アジアの大気環境評価手法の開発」では、沖縄辺戸岬ステーション、長崎福江観測所で行った多成分・連続観測データをデータベースとして整備すると共に、蓄積した観測データを用いて、越境輸送される汚染物質の空間分布、経年変動、組成変化などを分析し、中国等から排出された大気汚染気体が、エアロゾル(粒子状物質)に変化し、さらに粒子が大きくなるなどの、越境大気汚染の実態をまとめました。また、アジア域の大気汚染物質排出インベントリ(REAS)を開発して、近年の中国における顕著な増加を明らかにした他、化学輸送モデル、地上・衛星観測データを使用して、東アジア地域における広域大気汚染の空間分布、過去四半世紀における大気質の経年変化、越境大気汚染による日本へのインパクト、全球化学気候モデルを用いて対流圏オゾンの各地域における発生源の寄与を評価する研究をとりまとめました。

 中核研究プロジェクト「東アジアの水・物質循環評価システムの開発」では、最新の衛星データ、GISデータ、社会経済統計データ、自動水質観測、現地調査によって得たデータと水・物質循環モデルを用いて、陸域から河川への環境負荷の量と質的変化を推定し、数値実験によって中国の退耕環林政策や南水北調などの流域改造活動の影響評価を行いました。また、長江起源水が東シナ海の海洋環境・生態系に及ぼす影響を解明するために、観測船を用いた陸棚域調査を行い、中国沿岸で赤潮をもたらす植物プランクトン(渦鞭毛藻)が長江希釈水域では、特に初夏に発生していることを確認し、海水の3次元流動モデルを用い、渦鞭毛藻が優占する機構を解析しました。さらに拠点都市における技術・政策インベントリとその評価システムを構築するために、国内の代表的産業都市である川崎市について、水・エネルギー・物質解析モデルの検証と政策シミュレーションを行い、その知見を中国の類似した都市である瀋陽市に適用して実証研究を行いました。

 中核研究プロジェクト「流域生態系における環境影響評価手法の開発」では、小流域を単位にしたメコン流域データベースを完成し、メコン流域全体の自然環境と社会経済状況を把握して、メコン流域全体の土地区分図を作成しました。また、魚類の生息域評価モデルを開発し、ダム建設等が河川動態・流域生態系に与える影響を評価しました。さらに、メコン河流域に計画されたダムによる回遊魚と漁業に対する生態リスクを評価するために、魚の耳石を用いて回遊魚の回遊履歴を評価する技術を確立しました。メコンデルタの主要なマングローブ生態系で、水質と生態系機能の関連の一端を解明しました。

2.二国間での共同研究および国際連携・ネットワーク

 国立環境研究所では二国間協定や研究機関間の覚書などの枠組みの下で国際共同研究を実施していますが、その多くはアジアの国々との間のものです。また、多国間の国際共同研究にも参加していますが、このうち主にアジアに関連したものとして以下があげられます。

①AsiaFluxネットワーク
 アジア地域におけるフラックス観測研究の連携と基盤強化を目指し、観測技術やデータベースの開発を行っています。国環研はその事務局として、観測ネットワークの運用とともに、ホームページを開設し、国内外の観測サイト情報やニュースレター等による情報発信等を行っています。

②アジアエアロゾルライダー観測ネットワーク
 黄砂および人為起源エアロゾルの三次元的動態を把握し、リアルタイムで情報提供することを目指し、ライダー(レーザーレーダー)による対流圏エアロゾルのネットワーク観測を行っています。日本、韓国、中国、モンゴル、タイの研究グループが参加し、国環研はネットワーク観測およびデータ品質の管理、リアルタイムのデータ処理、研究者間のデータ交換ウェブサイトの運用を担っています。

③日韓中3ヵ国環境研究機関長会合(TPM)
 2004年2月、国立環境研究所、中国環境科学研究院、韓国国立環境科学院との間で定期的に会合(日韓中三ヵ国環境研究機関長会合)を開催し、3研究機関の機関長が協力して北東アジア地域の環境研究の推進を図ることに合意しました。3機関で情報交換,意見交換を行うほか、関連ワークショップの開催、分野を絞った共同研究の可能性等々について議論を進めています。

④温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)
 日本国の温室効果ガスインベントリ作成の他、国外活動として、途上国専門家のキャパシティビルディングの実施、アジア諸国のインベントリ作成機関を対象とした日本と各国との二国間連携協力の推進、気候変動枠組条約締約国会議(COP)や補助機関会合等における国際交渉支援、UNFCCC附属書I国のインベントリの集中・訪問審査活動への参加による各国審査報告書の作成支援などの活動を行っています。キャパシティビルディングについては、アジア地域の温室効果ガスインベントリ作成能力向上を目指して、環境省と共催で「アジアにおける温室効果ガスインベントリ整備に関するワークショップ(WGIA)」を行っています。

⑤グローバルカーボンプロジェクト(GCP)
 グローバルな炭素循環の自然的側面と人間的側面の総合化についての国際共同研究の推進プロジェクトです。つくば国際オフィスでは、「都市と地域の炭素管理計画(URCM)」を主導しています。

図6
図6 アジアの途上国での準好気埋立技術の実証
 ごみをただ空き地に野積みにしたり、土地造成のため海面やくぼ地,湿地に投げ込む「オープンダンピング」や「嫌気性埋立」に対し、埋め立てた廃棄物層をできるだけ好気(酸素がある)状態にして、安定化を促進し,浸出水の長期的な水質悪化やメタンの発生を抑制できる特長がある方式が「準好気性埋立」です。雨の多い東南アジアに適した方法と考えられるため、タイの大学等と協力して、実際の最終処分場を使って、発生するメタンなどを測定する実験を行っています。
上:準好気性埋立の概念図
下:タイの最終処分場での実験場
写真
タイの最終処分場での実験場

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