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2019年2月28日

国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第24回締約国会議(COP24)/京都議定書第14回締約国会合(CMP14)/パリ協定第1回締約国会合第3部(CMA1-3)参加報告

【行事報告】

衛星観測センター  松永恒雄・厖世娟
社会環境システム研究センター 藤野純一
気候変動適応センター 行木美弥・岡和孝

はじめに

 2018年12月2~14日にかけ、ポーランドのカトヴィツェで、表題の3会合ならびにこれらの補助機関会合が開催されました。COP24ではパリ協定を実施するために必要な細則、COP23で設立された「タラノア対話」の総括、途上国への資金的支援等について議論されました。国立環境研究所(以下、NIES)からは、本報告著者含め総勢5名が参加し、サイドイベント等で数多くの研究成果を発信しました。以下、同会議でのNIESの活動を紹介します。

(1)衛星観測に関する研究事業関連

 衛星観測センターでは温室効果ガス観測技術衛星(いぶき、GOSAT)シリーズを中心とする「衛星観測に関する研究事業」を推進していますが、その一環としてCOP24においてさまざまな広報活動を行いました。

 12月5日(水)には日本パビリオンにおいて「衛星による温室効果ガス観測:衛星はパリ協定にどのように貢献するか?」と題したサイドイベントを開催しました。本イベントではGOSATをはじめとする温室効果ガスを観測する衛星のデータを今後どのようにパリ協定に生かしていくかについて、衛星/モデル/インベントリ/行政の各分野の専門家をお招きして、現状のレビューと議論を行いました。イベント後も含めて多くの方々と意見交換をすることができました。

 展示については例年出展を希望する機関が多く複数機関の合同展示が事務局より強く推奨されているため、COP24ではNIESとバングラデシュ環境省との合同ブースを出しました(写真1)。

 さらに事務局に提供したGOSATのデータやGOSAT-2の打上げの様子をまとめたビデオがCOP24会場内のフードコートに設置された大型環状ディスプレイなどに時折上映される(写真2)など、COP24の会期中、多くの方にGOSATとGOSAT-2を知っていただくことができました。なおこのビデオはYouTubeの「国立環境研究所動画チャンネル」でもご覧いただけます。

合同展示ブースの様子
写真1 NIESとバングラデシュ環境省との合同展示ブースの様子。
上から吊ってある7つの球には2009〜2015年のGOSATによる二酸化炭素濃度データが貼り付けてある。毎年徐々に濃度が高くなっている様子がわかる。
GOSAT観測データが会場内で上映されたときの写真
写真2 COP24会場内のフードコートに設置された大型環状ディスプレイで上映されたGOSATの二酸化炭素データ。

(2)低炭素研究関連

パネルディスカッションの写真
写真3 12月7日サイドイベントのパネルディスカッションの様子(左から筆者(藤野)、マレーシア工科大学Ho教授、クアラルンプールMahadi局長、京都市 下間 地球環境・エネルギー担当局長)

 2005年にモントリオールで開催されたCOP11以来、低炭素社会シナリオに関する成果発表を行ってきました。近年では特にアジアの都市における低炭素社会シナリオの開発およびその実施の具体例の紹介に焦点をあて、交渉の後押しを行ってきました。今回のCOP24では、1週目金曜日(12月7日)に日本パビリオンにて「脱炭素に向けた都市の挑戦:アジア都市における低炭素実行計画策定状況」と題したサイドイベントを行いました。環境省の事業として行っているアジア都市の低炭素シナリオ構築支援の一環として、フィリピン最大の都市であるケソン市の低炭素都市シナリオを公表し、11月に実施したベトナム・ハイフォン市における低炭素都市シナリオ策定から建築物の低炭素化に関する研修の様子を共有しました。また、10年来の協力関係にあるマレーシア工科大学との連携で進めているイスカンダル開発地域や首都のクアラルンプール市を対象とした取り組み、そして京都市発祥の環境教育プログラムがイスカンダル開発地域をはじめマレーシアの小学校に展開している様子を共有しました(写真3)。2週目火曜日(12月11日)は、地球環境戦略研究機関(IGES)およびマレーシア工科大学とUNFCCC公式サイドイベント「都市の優れた取り組み:日中韓脱炭素共同気候研究イニシャティブ」を共催し、日中韓の大臣、自治体関係者、研究者らが日中韓およびアジアにおける都市の取り組みについて共有しました(写真4)。

環境大臣と自治体職員や研究者らの写真
写真4 日本および韓国の環境大臣(左から5番目と4番目)と先進的な取り組みをしている自治体職員や研究者ら(12月11日サイドイベント、筆者(藤野)は左端)

(3)気候変動適応関連(アジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム(AP-PLAT))

 COP22において、環境省は適応計画で謳われる国際協力・貢献の推進を実施するため、アジア太平洋域での適応推進を目的とした情報基盤AP-PLATを2020年までに構築することを発表しました。これを受け、NIESでは「アジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム」(AP-PLAT)の立ち上げに向けた準備を進めています。COP23ではAP-PLATのデモサイトを紹介しました。今回のCOP24のサイドイベントにおいては、行木気候変動適応センター副センター長がAP-PLATの進展状況について報告するとともに(写真5)、情報プラットフォームの在り方等を話題に関係者によるパネルディスカッションが行われました(写真6)。

 今回、COP24で紹介したAP-PLATデモサイトでは、Web-GISへの新たなデータの実装や適応資金メカニズム情報の追加等、COP23から大きく進展した点に焦点をあて報告を行いました。その後、国連環境計画アジア太平地域事務所(UNEP ROAP)、インドネシア国家開発計画庁(BAPPENAS)、タイ環境天然資源省(MONRE)、アジア開発銀行(ADB)、IGESによるパネルディスカッションにおいて、情報プラットフォームの在り方等について議論され、科学リスク情報と適応アクションを如何にうまく繋げるか、それぞれのステークホルダーに対するキャパシティビルディングの必要性、そしてデマンド・ドリブンによる(ユーザーのニーズにもとづく)情報提供の重要性等が提起されました。

プレゼンの様子の写真
写真5 行木気候変動適応センター副センター長によるAP-PLATの紹介
サイドイベントのパネリストらの写真
写真6 サイドイベントのパネリストら(高橋地球環境審議官(右から3人目)と行木気候変動適応センター副センター長(右から2人目))

 AP-PLATでは、アジア太平洋地域適応ネットワーク(APAN)やADBをはじめ、さまざまな国際機関と協力してAP-PLATに有益な知見や情報を整備し、アジア太平洋諸国とともに当該地域における適応取組を支援していくことを目指します。

(4)ウェブサイト

 COP24の会議の内容に関しては、社会環境システム研究センターのホームページ(http://www.nies.go.jp/social/topics_cop24.html)でも取り上げています。また、地球環境研究センターニュースでも取り上げられる予定です(http://www.cger.nies.go.jp/cgernews/)。ぜひ一度アクセスしてみてください。

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