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2013年2月6日

国立環境研究所研究プロジェクト報告の公表について(お知らせ)

(筑波研究学園都市記者会、 環境省記者クラブ同時発表)

平成25年2月6日(水)
独立行政法人国立環境研究所
  企画部長       德田 博保 029-850-2302
  環境情報部長     岸部 和美 029-850-2340
  【課題代表研究者】
  地域環境研究センター  珠坪 一晃 029-850-2474
  地域環境研究センター  高見 昭憲 029-850-2531
  環境リスク研究センター 曽根 秀子 029-850-2406
  【担当】
  環境情報部情報企画室  山口 和子 029-850-2343

国立環境研究所は、今般、研究プロジェクトの成果として3つの報告書を刊行しましたので お知らせします。  

SR-100-2012 資源作物由来液状廃棄物のコベネフィット型処理システムの開発
(特別研究):珠坪一晃
SR-101-2012 二次生成有機エアロゾルの環境動態と毒性に関する研究
(特別研究):高見昭憲
SR-102-2012 胚様体を用いた発生分化毒性学に特化したマトリックスの開発
(特別研究):曽根秀子

1 報告書・研究成果の概要

SR-100-2012 資源作物由来液状廃棄物のコベネフィット型処理システムの開発 (特別研究)珠坪一晃

 気候が温暖な東南アジア地域では、資源作物やその副生物を原料としたバイオエタノールの生産が活発化しています。一方、その製造工程から排出される多量の蒸留廃液は、安定化池による処理が施されており、温室効果ガス(メタン)の大気放散と水環境汚染の要因となっています。本研究では、廃液の適切な処理技術開発による温室効果ガスの発生抑制、水質保全、資源循環を目指して、高濃度蒸留廃液の適切メタン発酵処理技術の開発、処理水の循環利用に関する研究をタイの研究機関と連携して実施しました。

 その結果、高負荷対応型のメタン発酵処理技術の開発により、高有機物濃度(40~120 gCOD/L)かつメタン発酵阻害物質(硫酸塩、カチオン類)を含む蒸留廃液の安定的な処理、優れたエネルギーの回収(収支比9.5~11,電力基準)、大幅な温室効果ガスの排出削減を達成できる可能性が示されました。また処理システムの処理水を畑地に散布した場合、廃液の安定化池での処理と比較し、メタン排出量の大幅削減と、サトウキビ生育への効果が確認されました。本研究の成果を、開発途上国における廃水処理技術の普及と水環境及び地球環境の保全に役立てていきたいと考えています。

SR-101-2012 二次生成有機エアロゾルの環境動態と毒性に関する研究 (特別研究)高見昭憲

 直径が数µm以下の微小な粒子状物質(PM)は人の健康に影響を及ぼす可能性があるため、大気環境を保全するうえで大変注目すべき物質です。そのため、2009年度にはわが国のPM2.5(直径2.5µm以下の微小粒子)の環境基準が設定されました。近年、都市の大気環境に大きな影響を及ぼしていたディーゼル車からの粒子は減少する傾向にありますが、その一方で、窒素酸化物(NOx)や揮発性有機化合物(VOC)などのガス状物質から光化学反応で生成される二次粒子の影響が高まる傾向にあります。しかし、二次粒子、特にSOAと呼ばれる二次生成有機エアロゾルの大気中での動態は十分解明されてはおりません。この研究では、SOAの細胞への曝露による毒性の研究、化学組成の分析、大気中での動態解明のためのモデル評価や発生源の解明などに関する一連の研究を行いました。本研究報告書がPMの大気環境影響の研究の新たな取り組みの一歩になれば幸いです。

SR-102-2012 胚様体を用いた発生分化毒性学に特化したマトリックスの開発 (特別研究)曽根秀子

 安心・安全な社会の構築のために、環境化学物質ならびに環境有害因子に関して健康に対する迅速なリスク管理が求められています。ヒトの健康影響を反映するような培養細胞を利用した評価試験、いわゆる細胞アッセイの技術が必要であると議論されています。特に近年、動物 及び ヒトのES/iPS細胞である多能性細胞を用いて、種々の組織に分化誘導する研究が、世界中で活発に行われています。それらのうち、胚性幹(ES)細胞を用いた分化細胞を誘導するアッセイは、発生の過程全てを代表するものではありませんが、発生分化に対する健康影響を評価する試験として有力であると考えられています。本研究は、化学物質の発生毒性を評価するための細胞アッセイに最適化したマトリックスを開発することにより、細胞の分化誘導の過程を再現性良く制御した細胞アッセイの確立を目的に行いました。その結果、ES細胞を用いた健康リスク評価研究を行う上で重要な手法の開発や、有機ハロゲン化物質や内分泌攪乱化学物質に関する「初期曝露の晩発影響」における知見を得ることができました。ヒト胚様体を用いた細胞分化アッセイが順調に稼動していくならば、そこから得られた化学物質の量反応関係データを計算科学や情報工学的手法によって解析することにより、ヒトの曝露や生体影響を予測することが可能になります。このことが、次世代の化学物質の環境リスク管理に道を拓く事につながります。本研究報告書が、環境化学物質の生体影響を評価する上での新たな取り組みの一歩になれば幸いです。

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