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2011年6月30日

環境健康研究センターの組織と研究プログラム

【環境健康研究センターの紹介】

新田 裕史

 環境健康研究センター(以下、「健康センター」という)の役割は環境汚染物質等の環境因子による健康影響を明らかにし、その低減と未然防止を図ることです。そのためには、環境要因が人の健康に及ぼす影響の大きさ・程度、その機構を解明する必要があり、毒性学に基づく手法を用いて環境汚染物質等の環境因子による健康影響・発現機構の実験的解明と評価、簡易・迅速な曝露・影響評価系の開発、および観察研究である疫学の手法を用いて環境が健康にもたらす影響の同定と要因の究明に関する疫学的調査・研究を実施します。また、環境省が企画した全国規模の疫学調査である「子どもの健康と環境に関する全国調査」(以下「エコチル調査」という)実施の中心機関であるコアセンターとして、調査の総括的な管理・運営を行います(エコチル調査の内容については国環研ニュースvol.29No.4 参照)。

 健康センターは4つの研究室およびエコチル調査コアセンター内の調査及び管理・運営を担当する2つの室から構成されています。生体影響研究室は、環境化学物質、大気汚染物質、ナノマテリアル等、環境汚染物質・環境因子の影響評価と評価手法の確立、実践、高度化、検証に主として取り組みます。分子毒性機構研究室は、ゲノミクス、エピジェネティクス(DNA配列の変化によらない遺伝子機能調節機構)に特に着目し、環境汚染物質・環境因子の健康影響および発現機構の解明と評価に主に取り組みます。総合影響評価研究室は、環境汚染物質・環境因子による健康影響評価の総合化、体系化に取り組みます。環境疫学研究室は大気汚染物質をはじめとする環境汚染物質・環境因子による健康影響の疫学的評価とその手法の高度化、精密化に取り組みます。また、エコチル調査コアセンターでは、小児健康影響調査企画推進室は主に同調査の企画・調整、関係機関の業務管理に、小児健康影響調査解析・管理室は主にデータ整備・管理、試料分析・保存等の業務にあたります。

 エコチル調査は全国15地域のあらかじめ指定された市区町村に住んでいる妊婦さんと生まれてくるお子さん、加えてそのお父さんを対象とした調査です。調査内容は妊婦さんを対象とした質問票調査、診察記録などの医療情報の収集、出産後はお子さんの成長・発達などに関する調査を継続的に実施することになっています。また、妊婦さんやお父さんからの採血・採尿、出産時には臍帯血の採取、生後1ヵ月には母乳の採取などをさせていただいて、それぞれの生体試料中の化学物質などの濃度を測定し、環境汚染物質への曝露指標とします。これらの環境汚染物質と妊娠・生殖、先天異常、精神神経発達、免疫・アレルギー、および代謝・内分泌などさまざまな健康影響指標との関連性を検討することになっています。

 健康センターでは、先導研究プログラムとして小児・次世代環境保健研究プログラムを実施します。次世代を担う小児における心身の異常が世界的に増加しており、この科学的評価と原因の解明、適切な施策が急がれています。子供の健康には、化学的要因、大気汚染、物理的要因、生物学的要因、食事・栄養、教育、家族・対人関係、経済状況等、多くの環境因子が影響を及ぼしうるため、環境汚染物質を含めた総合的な疫学研究の計画と実施、解析が不可欠です。エコチル調査はこのような課題に応えるために実施されますが、疫学研究から得られる知見から健康リスクを低減するための方策を導きだし、環境政策に活かすためには、多様な環境汚染物質の環境動態や曝露経路に関する知見を組み込んだ曝露評価を行う必要があります。そのためにモデルに基づく手法やバイオマーカーによる手法などの曝露評価の高度化を目指します。また、小児の成長・発達を考慮したデータ解析手法や生物統計学的手法、及び小児の特性にあわせた調査手法の開発など、環境疫学手法の高度化に関する研究を進めます。一方、エコチル調査で得られる多くの知見に加えて、健康影響メカニズムを解明して疫学研究に生物学的妥当性を与え、莫大な数に上る環境汚染物質や健康影響の中から疫学研究で検討すべき対象物質やバイオマーカーを提案するために、これを相補・補完する実験的研究をあわせて推進することも必要です。

 小児・次世代環境保健プログラムでは、エコチル調査と連動しながら図で示した2つのプロジェクトを実施します。

図 小児・次世代環境保健研究プログラムの構成
※in vivo : 実験動物を用いた試験、in vitro : 培養細胞などを用いた試験

 健康センターは環境と健康との関連性に係わる研究の新たな展開を目指すとともにエコチル調査の推進のために最大限の努力をします。

(にった ひろし、環境健康研究センター長)

執筆者プロフィール:

新田 裕史

研究所に勤めてちょうど30年目の年に環境健康研究センター長を拝命することになりました。残り少ない研究者生活の締めくくりとして、時にはチェンジアップも投げながら全力投球したいと思います。

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