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2021年9月30日

人が去ったそのあとに
人口減少下における里山の生態系変化と
その管理に関する研究

環境儀 No.82

環境儀82号はしがき画像

 里山は農業や木材利用などの人間活動によって維持されてきた生態系であり、生物多様性の保全にとって極めて重要であるとともに、歴史的遺産としての価値があります。里山の要素である半自然草地(刈り取りや火入れなど人為的管理によって維持されてきた草地)の起源は、最終氷期(~1万年前)の寒冷・乾燥した気候下で広がっていた草原生態系にあると言われます。縄文人が狩りや焼き畑などの目的で火入れを行い、弥生時代以降の水田耕作や牧畜、古墳時代以降の製鉄・製陶など時代とともに多様化する様々な資源利用が行われる中で森林化が抑えられ、最終氷期の生物の避難地としての役割を果たしてきました。そのような里山における人間と生物の関係性は戦後まで続いていましたが、燃料革命や高度経済成長以降の産業構造の変化によって利用が減少し、良好な状態で保全されている里山はごくわずかになってしまいました。そして、今後進行する人口減少・都市への人口集中により、その維持すら困難になることが予想されます。

 国立環境研究所では、生物分布情報の解析や無居住化地域の現地調査を通して、長期的な人間と生態系に関する歴史の解明や、人口減少下で起こる長期的な里山の放棄が生物多様性に与える影響を明らかにする研究を進めてきました。その結果を通して、人口減少下において持続可能な生物多様性保全につながる土地利用のあり方を模索してきました。本号では、その研究の成果を紹介します。

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